農業も変わっていく (その2)

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2020年8月(№33)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(244) 農業も変わっていく(その2)

2019年12月14日

 

☆前書き

今回のブログは、前回の続きです。引き続き2019年10月7日の日本経済新聞(参考資料1)を参照します。

 

☆本文

食用バラ農園「バラの学校」を経営するNさんも、会社勤めから農業に転職した人です。無農薬の食用バラを300種作る農園を運営し、この農場の産品を大手百貨店や自社のサイトで販売しています。会社勤務時代に、フラワーデザインの学校などに通い、花にのめり込みました。ブリザーブドフラワー(注1)の販売会社として独立後、2011年に食用バラの生産・加工とスクールを手掛ける農場を設立しました。2018年に、業界でも珍しいバラの葉を使ったお茶も開発しました。

千葉県南房総市で「大紺屋農園」を営むBさんも、金融・不動産業からUターンした人です。6600平方メートルの農地で、タイ野菜や一個500円を超えるイタリア野菜チコリーなど80種類を、無農薬で少量生産しています。一般のタイ料理よりも、1〜2割高い価格でも、大手タイ料理レストランから引き合いがあります。

 

☆まとめ

このブログで紹介した農業は、生産者が、消費者一人一人の希望を具体的に把握して、

最も喜ぶものを提供する事業です。これは、次世代の産業の中心になると言われている「ダイレクト・ツー・コンシューマー: D2C(Direct to Consumer)」と呼ばれる事業のかたちです。ここでは農家で作った農作物や花卉などが八百屋や花屋やスーパー、コンビニなどを介さずに、買いたい個人に直接ネット通販されます。ここでは、売る方が売りに行くのではなく、買う方が探しにいく姿です。ですから、本当に欲しいものが買えるのです。でも、売る方は、買う方の「欲しいという熱い思い」を、いち早く察知して、ネットの棚に敏速に陳列する必要があります。

花卉の栽培等では、この売買の形が、コロナ以降の新しい産業の建設で、急増していくはずです。山村での花卉の栽培などにも、追い風が吹くでしょう。この追い風を身体全体のセンサーを研ぎ澄まして感じて、敏捷に波に乗りましょう。

 

ここまでに述べてきたような改革は、諸外国に比べて著しく遅れていました。この改革の遅れは、日本の「和の社会を作れる」美質の裏側にある「伝統を打ち破れない」欠点によるものです。

今、日本社会を、恐怖の淵に追い込んでいるコロナの悪魔は、皆が営々と作ってきた大事なものを、ことごとく奪い去ってしまいました。でも同時に、この障壁も吹き飛ばしてくれたのです。ですから、今は、改革の絶好のチャンスなのです。

このブログに書いた女性たちによる農業の改革は、その改革の最高の実例です。日本の大都市ではない「地域のマチ」、私の言う「山村の中核のマチ」の次世代は、ここに書いたような「先進農業」が、牽引することになるでしょう。

そして、その牽引者の中心は、女性たちになると思います。未来の日本全国各地は、キラ星のごとく輝く「先進農地の光彩」に満ちた国になると思います。(「まとめ」は、2020年、夏、記述)

 

(注1)プリザーブドフラワー(Preserved flowers):生花や葉を特殊液の中に沈めて、水分を抜いた素材。

(注2)参考資料2、日本経済新聞、2019.10.25から引用。

(注3)ダイレクト・ツー・コンシューマー: D2C(Direct to Consumer):製造から販売までを垂直統合したビジネスモデルのうち、実店舗を介さず、インターネット上の自社ECサイトでのみで販売するモデル。インスタグラムなどのSNSを通じた消費者(コンシューマー)と生産者の情報交換が主力になる。

 

参考資料

(1) 日本経済新聞、2019年10月7日。

(2) 椎野潤ブログ:ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)で米小売を揺さぶる 寝具販売 キヤスパー 日本での先駆者ユニクロ 情報生産販売業、2019年11月17日。

 

[付記]2020年9月8日、椎野潤記

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