ぎふ フォレスター協会設立 岐阜 小森胤樹さんの次世代林業を目指した活躍 (その4)

林業再生・山村振興への一言(再開)

 

2020年9月(№35)

 

□椎野潤(続)ブログ(246)なぜ、一般社団法人 ぎふフォレスター協会を設立したのか(その4) その1〜3を読んで 2020年9月15日

 

☆前書き

今日のブログは、前回(その3)の続きです。今回は、「なぜ、ぎふフォレスター協会を設立したのか」その1〜3を総括して、次への展開を考えます。

 

☆本文

小森さんへのインタビューで、話を聞いてみて、林業再生も大分、進んできたと感じました。この次は、具体的な事例を紹介していきたいと思いました。

私は、前回の「その3」に出ていた「地域林政アドバイサー制度」に、強い関心を持ちました。そこで、インターネットで検索してみましたが、私は驚きました。林野庁は、実に手厚い支援をしているのです。

「地域林政アドバイサー制度」では、以下の諸点の支援をしています(参考資料1)。

(1)市町村森林整備計画及び構想の作成関係業務。

(2)市町村有林の経営計画の作成、実行管理、事業発注への助言。

(3)森林経営計画の認定の指導・助言(現地確認、事業体指導)。

(4)森林経営管理制度に係わる事務の指導・助言。

(5)伐採・造林の指導・助言(現地確認、事業体指導)。

(6)民有林における地籍調査、境界明確化活動の指導・助言。

(7)森林GIS、林地台帳システムの整備、メンテナンス。

(8)新たな土地所有届出や所有者からの修正申し出を踏まえたデータの更新への助言。

(参考資料1から引用)

実に至れり尽くせりです。

 

でも、小森君は、なかなか、思うようには、進んでいないようです。何故でしょうか。全国の都道府県市町村のうち、林業改革が進んでいないところでは、何処から進めたらよいか、どこから支援を受けたら良いかわからないのでしょう。もしかすれば「相談する窓口の部署」すらないところもあるかもしれないと、思いあたりました。そして遠い昔、2000年初頭の頃の、あることを思い出しました。

当時、私は、産学協同研究会「建築市場(けんちくいちば)研究会」を進めていました。県の林務部の方も熱心に参加してくれていました。特に熱心だったのが、高知県でした。私は、高知県を訪ねたとき、隣の香川県も訪ねてみたのです。ところが、驚いたことに香川県には、森林管理部門がなかったのです。

説明してくれた方は、森に檜は沢山あるのに、専門部署は、まだ、ないのです。どこから、始めたら良いでしょうか聞かれました。私は、当時、経営学の教員でしたから、企業を起業しようとする人が最初に読む、入門書を紹介しました。そして、授業でも講義していて、当時、熱心に指導していた、演繹的なシステム設計法「ワークデザイン(参考資料2)」を紹介しました。

私は、それから、程なく定年になり、この御縁は継続しませんでしたが、昨日、インターネットで調べてみましたら、現在は「みどり整備課」が設けられており、熱心に活動されていました。また、建築市場時代の友人がいる香川県高松市も、農林水産課の中に林業係があり、活発に活動されているようでした。でも、全国の中小町村の中には、まだ、未整備のところも多いのでしょう。小森さんが探しているのは、そのような地域の人たちでしょう。

 

2004年の頃、私は、九州で先進的な実証実験をしていました。私は、この時の実験のことを書いた書物があったはずだと、思い当たりました。そして探して見付けたのです。書名は「生きている地球と共生する建築生産(参考資料3)」です。

この実験は、鹿児島市に建設する木造住宅の杉の構造材を、家を建てる顧客のパソコンから直接、山林の林家へ、インターネットで木材を発注して、加工済み製材を直接、建設現場へ届けてもらう試みです。これは前回までのブログで取り上げた「ダイレクト・ツウ・コンシューマー(D2C)です。

実施していたのは、鹿児島の工務店ベンシステムと鹿児島県の大隅半島の南端の大隅町のベネフィット森林資源協同組合でした。このプロジェクトのリーダーは、鹿児島建築市場を推進していたベンシステムの高橋寿美夫さんとベネフィット森林資源協同組合の森田俊彦さんでした。ところが、最近、森田さんと、偶然、東京で会ったのです。森田さんは、鹿児島県南大隅町の町長になっておられたのです。全国探しても、これほどまで林業に精通している町長は、そう多くはいないでしょう。

私は、そう考えて電話をして、話の経緯を話して、小森君の活動への参加を頼みました。森田さんは「喜んで参加します」と快諾してくれました。近いうちに、小森君と森田さんの出合いの場を段取りしたいと思っています。

 

☆まとめ

この実験では、大きな成果が得られました。この頃、山主の手取りは、5、000円/立方メートルに止まっていました。これを13、000円/立方メートルまで、回復させることができました。これで、木を伐採したあとの育林ができます。山林が未来に向けて永続的に生存して行くことができます。

また、建築市場(けんちくいちば)が69,900円/立方メートルで買っていた、加工済み杉材は、63、000円/立方メートルで買うことができました。商流・物流費の徹底的な削減の大きな効果が出たのです。その削減効果で得られた金銭は、山主の育林費に返すという発想のもとで、なおかつ、住宅生産コストの低減が実現したのです。これは、人口減少が動かし難い現実となった現代で、生産性を上げ、GDPを拡大させ続ける道を開くものです。

また、本書は、和泉洋人総理補佐官に、ご指導いただき、巻頭文をいただきました。今から15年前の2005年(平成17年)に、現在を見据えた、素晴らしい先見性に満ちた巻頭文を、いただいております。深甚なる謝意を表します。今後も一層、日本国の未来の御牽引をお願いいたします。

 

(注1)参考資料3、pp.111〜121。

 

参考資料

(1)地域林政アドバイサー制度について:林野庁 森林利用課 森林集積推進室 令和2年4月。

(2)椎野潤著:ワークデザインを用いた住宅生産理想システム、建設維新選書、実践的情報技術、ITの高度利用の道、第3巻、メディアポート、2013年4月2日。

(3)椎野潤著:生きている地球と共生する建築生産、日刊建設工業新聞社、平成17年月7月27日。

 

[付記]2020年9月15日、椎野潤記]

 

[コメント]

ここで示した実験に、強い興味を持たれた方は、参考資料3(注1)を読んでいただくと良いと思います。でも、この本は、もう、絶版になっています。中古本はアマゾンで買えますが、出版時2,625円だった本が、中古本は、7,480円〜14,770円と高騰しています。そこで、この実験を記載した部分の要約を、あらためてワープロで打ち、このブログ上で、紹介することにしました。次回のブログで発信します。

なお、購入される方は、以下の手順で購入できます。

グーグル――アマゾン――Amazon公式サイト|amzon.co.jp――椎野潤本――生きている地球と共生する建築生産 」

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