国土交通省が、訪日客の集客戦略に「位置情報」を本格的に活用します。システムを構築し、自治体などに開放します。分析の対象にするのは、訪日客をはじめとした国内の観光客です。国が、このようなシステムの構築を直接実施するのは、とても珍しいのです。私は、その成果に大きな期待を寄せています。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年12月 (№169)
椎野潤(続)ブログ(380)山村振興 観光戦略の抜本的な改革 国 NTTデータと連携してデータ作成 訪日客の行動分析 ルート整備や人流分散化 2021年12月28日。
☆前書き
日本経済新聞は、2021年11月3日の朝刊で、このことを報じていました。今日は、これについてブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。
☆引用
「国土交通省はNTTドコモと連携し、観光政策にいかすデータベースをつくる。携帯電話の位置情報などをもとにし、出身国・地域や移動手段、訪問先といった詳細な移動データを集める。観光ルートの整備や感染対策への活用を想定する。新型コロナウイルス禍で大幅に減った訪日客の需要回復に備える。(参考資料1、2021年11月3日、日本経済新聞から引用)」
☆解説
国土交通省は、NTTドコモとドコモ・インサイトマーケティング(東京・豊島)の協力を得て、携帯の位置情報を分析します。2021年度にデータの基盤をつくり、自治体などへの開放を検討します。国が位置情報を使った政策の立案に、直接かかわるのは、とても珍しいのです。分析の対象にするのは、訪日客をはじめとした国内の観光客です。
訪日客の場合は、ドコモ回線に接続した日本に入国した後の利用者の、情報を集めます。ここでは、出身国・地域をはじめ、入出国する空港や周遊エリア、交通手段、滞在時間・日数など幅広いデータを含めます。すでに、2019〜2020年度分の過去のデータは、ドコモから取得しました。
これまでは国や自治体が、アンケート調査などの書類を中心にして、データをまとめてきました。この観光戦略のアナログ分析を抜本的に変換します。今後は携帯の全地球測位システム(GPS、注1)や基地局も利用して多くのデータを集めます。最小単位としては、50メートル四方の人の動きを解析することを可能にします。プライバシーに配慮して、氏名など個人情報が特定されないように加工します。
データの活用方法も変えます。訪れている人が増えている観光資源がみつかれば、東京からのアクセスなどの観光ルートを整備します。鉄道やバスなど公共交通の新設・増便やレンタカーのデータの活用では、移動に対応した駐車場の整備などを想定します。ここでは、いずれも、データ分析を土台にした政策に変換します。
国交省は、特定の混雑が目立つ処について、周囲に分散させる対策を実施します。災害時の帰宅困難者対策への活用も検討します。柔軟な対策が打てるように、システム整備を急ぎます。
国交省は、一部地域を対象に、実証実験を始めました。札幌市や福岡市など主要観光地5市で、交通量などのデータを、すでに収集しています。ドコモの契約者だけでも4000万人の動きが把握できます。今後は、さらに新たな自治体を選抜して、データ分析や活用の課題を探ります。構築したデータ基盤は、クラウドサービス(注2)として、無料で開放し、自治体や観光団体が自由に利用できるようにします。当面は国が運用しますが、将来はシステムを外部に譲渡し、民間サービスに移行させます。(参考資料1、2021年11月3日、日本経済新聞を参照引用して記述)
☆まとめ
コロナの悪魔の襲来で、訪日客は激減しました。日本政府観光局によりますと、2020年の訪日客数は411万人で、2019年より87%も減ってしまったのです。2021年も入国制限が続いており、コロナの悪魔の襲来前を9割以上、下回るペースが続いています。その一方で政府は、2030年までに、訪日客を6000万人に増やす目標を掲げています。
この難しい難題を解決するには、2種類のロボットの支援が必要になります。まず、その第一は、みんなが使っているスマホの中にいる「スマホアプリ」のようなロボット君です。これは膨大なデータを読み込んで、全体的な戦略を立てる超能力を持ってています。訪日する海外の人達から、どんどん情報をもらって、その人達が、今、日本に来て満足しているか、もっと満足するために何をしたいと思っているのかの情報をもらうのです。AIを総動員して、その答えを見付けてあげて、旅を楽しくしたいと願っている顧客に返します。
各地に、顧客から情報を受け取る装置を設置します。顧客にスマホを使って入力してもらいます。そしてその回答を、顧客のスマホへ返します。でも、ここでは顧客の氏名などの個人情報は、プライバシー保護のため扱わないことにします。でも、ここでロボット君は、顧客ひとり一人について、個別に希望を認識し、取り扱わねばなりません。そのため訪日客には、入国時に、スマホで登録番号を取得してもらいます。そして顧客が日本を離れるまで、ロボット君は「その番号」で個客を認識して、きめ細かく対応し、その客が日本にいる間中(あいだじゅう)、楽しく過ごせるように、旅行の企画を、次々と修正して対応するのです。この第一のロボット君は、ヒトの形はしていません。「情報受信機」の形をしており、人工知能(AI、注3)の凄い頭脳で、顧客に対応するロボットです。
次に、第二のロボット君は、人形ロボットです。ただ旅行の企画を考えるだけでなく、良くみて状況を判断して、会話をし、必要に応じて歩いて行動します。第一のロボットの「情報受信機」のある場所を知っていて、顧客を案内します。重いものを運んでくれたり、いろいろな手続きをしてくれたり、様々な作業をしてくれます。一人旅で淋しい客の話し相手になってくれて、旅の道連れになってくれる相棒ロボットも出現するでしょう。
このロボットの相棒達は、人が「密」に集まって、コロナの悪魔が再来するのを防いでくれます。訪日客の満足度を高めて、観光の経済効果を拡大してくれます。今、日本では、コロナを抑えつつ、経済を再開させるには、どうするのが良いのかが課題になっています。このロボット君達が、充分にいてくれる社会が実現すれば、この両立は自然にできます。
ただ、この社会が実現したとき、本当に幸せな社会になっているのかどうかには、人々の希望を徹底的に聞いて、それを満たしていけるかどうかが重要です。ロボット君が押しつけがましく「密を防止し」「観光所得の拡大」を推し進めたのでは、逆効果になるでしょう。これは一重に、ロボット相棒君の判断力を支えるコンピュータソフトウエアの開発が、この難題をこなせるレベルにまで、進化できるかどうかに、かかっています。
そんな、心の問題は、機械には無理だと、これまで考えられてきましたが、私は、AIが遠からず人間を超すのは確実だと感じています。それほど、AIの進化は凄いのです。
でも、訪日客は、自分の行きたい処へ行けても、行った先が「激しい密」になり、大混雑であったら、疲れ果てて旅を終わるでしょう。このブログの前半に書いたように、国土交通省が、今、展開を開始した「密」を防止し「分散」させる政策が成功していなければ、訪日客は、喜んで帰ってくれないのです。
また、「密」を避け「分散」させると、それにより、「利益」が増大する市町村が出る一方で、「利益」が減少する処も出現するでしょう。ここに対立や、非協力の心が出たのでは巧くいかないのです。ここでは、なんとしても、「共生の心」が必要です。
利害が対立する市町村を「共生」させるのは、自治体の仕事です。複数自治体をまたがる調整は国の仕事です。ですから、国土交通省が始めた国によるデータによる統合戦略は、国の仕事として極めて重要なのです。
この全体を統合する正しい方針を示す政策があって、それを実施する段階に、ここに述べたロボット君がいれば、きっと巧くいくのです。次世代にむけて、素晴らしい社会を構築して運営していくには、これが何よりも重要です。
これは国が先頭にたって官民をあげて邁進することが、とても重要なのです。日本は、今、大事な時期にあって、国も、自治体も市町村も力を合わせ、さらに大企業から、中小企業、零細企業に至るまでがスクラムを組んで、これを目指して行かねばなりません。私は、地域の住民全員を束ねた大きな動きが、ここで胎動することを、強く願っています。間もなく幕をあける2022年の新年に、大きな期待を寄せています。(参考資料1、2021年11月3日、日本経済新聞を読んで深く思考して記述)
(注1)全地球測位システム=(GPS: Global Positioning System): アメリカで軍事用に開発された技術。現在は世界中で利用されている。飛行機や船舶、自動車等の乗り物をはじめ、個人が持つスマートフォンにも搭載。人工衛星(GPS衛星)から発せられた電波を受信し、現在位置を特定する。
(注2)クラウドサービス(cloud service):ソフトウェアやデータ、それらを提供するための技術基盤(サーバなど)、手元のコンピュータに導入して利用していたモノを、インターネットなどのネットワークを通じて利用者に提供するサービス。
(注3)人工知能=AI(artificial intelligence):「計算(computation)」という概念と「コンピュータ(computer)」という道具を用いて「知能」を研究する計算機科学(computer science)の一分野」を指す語 。言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術。計算機(コンピュータ)による知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野。
(注4)スマホアプリ=スマホアプリケーション:スマホ登載のコンピュータソフトウエアー。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年11月3日。
[付記]2021年12月28日。
[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]
[指導を受けたブログ名:山村振興 青ヶ島に探る「市町村の自立 2021年12月24日]
[引用文]
大谷様
ブログ配信ありがとうございます。
祭りは時間をかけて、段取り、準備しますので、都会に出ていても準備状況やお神楽の練習など心配で、故郷を想い出させます。
青ヶ島は有名な島のようで、ネットで「柳田邦男「青ヶ島還住記」を読む」(土屋久)を読んでみました。
1785年(天明5)の大噴火で島民は島外に逃れ、島民が島に戻れたのが1835年(天保6)ということで、地域の誇りとしてまとめられていますが、噴火ですっかり荒れ果てた村にそれでも戻るという島の魅力、求心力は何なのか、私たちの物差しでは測れない何かがあるのではないかと思います。コロナ後の生き方のヒントがあるのではないかと思います。
酒井秀夫