公共施設集約でコスト削減 秋田県の自治体7割で面積圧縮 島根県邑南町 老朽住宅 転居促す

☆巻頭の一言

日本各地の市町村には、古くなり余剰になった公共施設が山積していました。今、ようやくその積極的な整理が進み始めました。公共施設の「拡充」でなく「縮充」の公共事業が本格化しました。

 

林業再生・山村振興への一言(再出発)

 

2022年6月 (№218)

 

□椎野潤(新)ブログ(429) 公共施設集約でコスト削減 秋田県の自治体7割で面積圧縮 島根県邑南町 老朽住宅 転居促す 2022年6月21日

 

☆前書き

2022年5月28日の日本経済新聞は、このことを記事に書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。

 

☆引用

「公民館や町営住宅など公共施設の集約・削減が地域で進み始めた。人口減少に加え、高齢化の進展で、自治体の財政負担は増すばかり、維持管理コストの圧縮は不可欠となっている。先行するのは秋田県で、およそ7割の自治体が保有面積を減らした。」(参考資料1、日本経済新聞(杉本耕太郎、磯貝守也、笠原昌人)2022年5月28日から引用)

 

☆解説

公共施設は1970年代に多く造られ、改修や建て替え時期が一斉に到来しています。最も規模の大きい東京都の試算では、維持改修費が2050年度までで11.3兆円(トンネルなどのインフラを含む)に上ります。岐阜県土岐市は今後40年間で、16.6億円が改修などに必要だと試算した上で「財政不足になる恐れがある」と危機感をあらわにしています。

総務省は2014年、自治体に対し統廃合や民間売却などの方針を盛り込んだ、管理計画の策定を求めました。財政面でも「公共施設等適性管理推進事業債」を用意しました。事業費の9割分に充当でき、うち国が最大半分を地方交付税で補填できます。「壊す」ことも公共事業化します。

各自治体の公共建築物の保有面積を基に、数値記載がある1279自治体の面積増減を算出しましたところ、2016年度から直近の2019年度までに、40.8%の自治体が保有面積を削減していました。都道府県別でみますと、そのトップは秋田県でした。島根県(61.5%)、大分県(58.8%)が続いています。

 

全国で、最も早いペースで人口減が進む秋田県では、残し続ければ老朽化に伴い、今後30年間の維持管理費が年平均103億円と6割増えます。ですかち、秋田県は、今、この問題に、強い危機感を持っています。

秋田県と県内市町村は2015年度、協議会を立ち上げ、情報交換や連携の検討を始めました。2022年6月には、県民会館と秋田市文化会館を集約した新たな文化施設「あきた芸術劇場」を開館します。延べ床面積は2万2653平方メートルと従来より4.0%減らしました。市町村が売却・譲渡を希望する施設や土地情報を、県ホームページに掲載することで取引の活発化も狙っています。

 

島根県では、人口1万人の 邑南町が老朽化した町営住宅の住人に、転居を促した上で、住宅を取り壊す「空き家政策」を進めています。転居を望まない住人は、住み続けることはできますが、新たな入居者は募らず、住民がいなくなった時点で取り壊します。同町の公共施設保有面積は、2016年度から11.8%減りました。(参考資料1、日本経済新聞(杉本耕太郎、磯貝守也、笠原昌人) 2022年5月28日から参照引用)

 

☆まとめ

このような過剰になった公共施設を保有する自治体では、その削減は、早急に進めねばならないことなのです。でもその一方で、公共施設の集約は、住民サービスの低下につながることも多いのです。ですから当然、住民の反発も強いのです。ここでは丁寧な対話が不可欠です。

 

保有面積を4割減らす目標を掲げる、鹿児島県出水市は、2015年度の管理計画策定や2021年度の改定前に、住民の意見を聞く機会を設けました。

統廃合で利便性や施設配置がどう変わるかを示し「相手の意見を否定しない」などのルールを設けて、住民が意見を出しやすいようにしました。市は「拡充」ならぬ「縮充」として、可能な限りサービスの低下を防ぎます。2020年には老人福祉センターなど4施設を集約した一方で、住民が自由に使える共有スペースを、新たに設けました。

 

でも、このような環境の中で成長に照準を定めて挑戦するところも現れました。維持管理費の4割減を目指す計画を2017年に策定した長崎県平戸市(保有面積23.1%減)は、成長に照準を定めました。企業の工場新増設などにより、新規就業者を2027年度に430人と2016年度の2.9倍にするほか、年間創業者数を、11倍の154人にする目標を掲げました。2022年度予算では、雇用拡大支援に、2億1千万円、創業支援に4千万円を充てます。厳しい縮減を進める一方で、このような挑戦をするのが、極めて重要です。攻める気持ちがなければ、赤字の解消は結局、難しいのです。このような挑戦をしてくれるところが、各地に続出してくれることを期待しています。

 

 

このブログの執筆で、参考引用した、2022年5月28日の日本経済新聞は、三つの図表を掲載していました。公共施設面積が減少した自治体が多い都道府県(2019年度、図表1、注1)。保有面積の減少が進む自治体の事例(図表2、注2)。公共施設等適性管理推進事業債の利用推移(図表3、注3)。

 

図表1は、この新聞紙上に、日本列島の地図として示してあり、各都道府県における公共施設面積の減少率が、青色の濃淡で塗り分けてありました。減少率が一番高い(60%以上)地域は、秋田県と島根県でした。

次に減少率が高い(50〜60%未満)地域は、北海道、石川県、福井県、茨城県、静岡県、和歌山県、徳島県、大分県、長崎県、鹿児島県でした。そして最も減少率が低い(30%未満)地域は、岩手県、宮城県、福島県、愛媛県、高知県、佐賀県でした。

結局、公共施設面積の減少が最も進んでいるのは秋田県と島根県です。そして最も減少が進んでいないのは、東北地方の太平洋側3県、四国の過半と佐賀です。その他の地域は、大局的にみると大きな地域間格差はありませんでした。

 

図表2には、保有面積の削減が進む自治体の事例が、5例示されていました。

市町名    2019年度の削減率       事例

(1)長崎県平戸市    23.1%    小学校と中学校をそれぞれ統合

(2)佐賀県嬉野市    17.7%    公民館と交流施設を市民センターに統合

(3)山形県真室川町   17.4%    廃校の小学校を民間譲渡、町営住宅解体

(4)神奈川県三浦市   12.8%    旧漁村センターを地元に譲渡

(5)北海道森町     12.8%    公設民営のリゾート施設を民間売却

どの地域にも、削減の進んだ市町はあります。

 

図表3には、2017年から2021年までの公共施設等適性管理推進事業債の適用事業数が出ていました。事業債の適用は2017年の2000件が、2021年には8000件に増えていました。すなわち、4年で4倍になっています。右肩上がりの、ほぼ綺麗な直線でした。この4年間、公共施設適性管理事業債の適用は、年々着実に増えています。(参考資料1、日本経済新聞(杉本耕太郎、磯貝守也、笠原昌人) 2022年5月28日から参照引用)

 

(注1)2016年度比。総務省が公表している各自治体の施設面積から算出。

(注2)削減率は2016年比。総務省資料を基に算出。

(注3)事業数、自治体の届け出ベース。

 

☆参考資料

(1)日本経済新聞、2022年5月28日

 

[付記]2022年6月21日。

 

 

 

[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]

[指導を受けたブログ名:□ 椎野潤(新)ブログ(428) 林産複合体企業を目指せ〜消費者直結生産 2022年6月17日]

 

文月恵理様

 

ブログ配信ありがとうございます。

 

塩地さんの論文第3弾は、国産材を生かしきれていない林業界の構造です。

林業が生活者に身近ではない理由として、仲買人、中間事業者、生産プロセスの分業によって生活者に正対していないからとし、その真因として、天然品から派生する様々なリスクを分散したいという思惑と、機械や設備メーカーの枠内での工業化にとどまっているという事を指摘されています。

瑕疵商品が出た場合、分業化によるコミュニケーションの複雑さによって時間を稼ぐことができるとのことで、これでは購買者の信用が得られず、顧客が離れていってしまうことでしょう。そこでフェイク商品が登場し、機械メーカーやソフトメーカーに従属してしまい、今後も仲買人を通したプロダクトアウト生産を続けるならば、いつまで経っても消費者とは密接な関係は築けないとされています。

これからは、産地直送の、素材感を活かした生産と小売りの直結、産地と消費地の近接こそが、国産材を活かす最大メリットであると結んでおられます。

なぜ、地産地消なのかの理由を、塩地さんが明快に説明しておられます。

 

酒井秀夫

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