アマゾン 楽天など小売り流通プラットフォーマーに対抗する スタートアップ勢 

林業再生・山村振興への一言(再開)

2021年2月(№80)

 

□ 椎野潤(続)ブログ(291) アマゾン 楽天など小売り流通プラットフォーマーに対抗する スタートアップ勢 2021年2月23日

 

☆前書き

企業や個人のネット通販を、支援するサービスが急増しています。小売りの潮流に乗ったスタートアップ(注2)の上場も急増しています。コロナ禍の沈んだ世情のもとで、スタートアップが凄い勢いで拡大中です。日本経済新聞の2021年1月25日の朝刊は、以下のように書き出していました。

 

☆引用

「企業や個人のネット通販を、支援するサービスが増えている。手軽に出店できる電気商取引(EC)モール(注1)、自社サイトの作成支援に加え、物流やマーケッティング支援など裾野は広い。「アマゾン」など大手サイトに頼らない、小売りの潮流に乗ったスタートアップ(注2)の上場も急増。小売りのネットシフトを推進し、さらに市場が拡大する循環が生まれている。」(参考資料1から引用)

 

☆解説

電子商取り引き(EC)サイトは、複数の事業者が出店できるモール(電子商店街)型と、事業者ごと独自のサイトを持つ自社EC(電子商取引)型の2つに大別できます。事業者側からみると、自社ECは、手数料などのコストが低く抑えられて、裁量も大きいのですが、集客では、多くの利用者が集まるモール型が優位です。

わが国の国内市場では、自社ECは1/3程度です。そして、近年は、アマゾンジャパン(東京・目黒)や楽天など、モール型のシェアが高まっていました。しかし、コロナの悪魔の襲来で、状況は一変したのです。実店舗が苦境に陥る中、ネットに活路を見出す事業者が増えているからです。販売者は、交流サイト(SNS、注3)などで、顧客と接点を持ちやすくなりました。「ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C、参考資料2、注4、5)と呼ばれるメーカー直販の流れも追い風です。

 

ECサイト(注1)作成支援の上場企業BASEは、そんな零細・個人事業主の「駆け込み寺」として注目を集めています。機能やデザインを選ぶだけでサイトが作れる簡易さが支持され、利用店は2020年12月に、ここに参集したスタートアップ(注2)は、実に130万店になりました。これらの参集者は、個人事業主の店舗経営者ですが、ECサイト事業者としては、スタートアップなのです。2019年10月のBASEの上場から、僅か一年ほどで、これらは11倍になりました。

ECサイト作成支援ビジネスは、コマースOneホールディングスなど多くの企業がひしめいています。(参考資料1、2021年1月25日、日本経済新聞、伴正春を参照して記述)

 

☆まとめ

コロナの悪魔の襲来は、人々が長年月をかけて築いてきた多くのものを破壊しましたが、このスタートアップ達には、強い追い風になりました。2020年のコロナ危機のもと、このスタートアップ達が、続々、上場しています。でも、その事業の姿は、色とりどりです。以下に列記します。

 

社名       事業の分類      特徴      四半期流通額 上場時期

(1)BASE     自社サイト作成支援  個人事業主など  253億円 2019年10月

130万店が利用

(2)コマースOne  自社サイト作成支援  中堅中心に27  382億円 2020年6月

ホールディングス            00店が利用

(3)インターファクト 自社サイト作成支援  中堅・大手中心に 319億円 2020年8月

リー                  に380店が利用

(4)クリーマー    ハンドメード、工芸  出品者は20万人  38億円 2020年11月

品のモール運営

(5)いつも      モールと自社サイト            21億円 2020年12月

を組み合わせた戦略

コマースOneは、BASEに比べ、利用店数は僅か0.3%ですが、四半期の流通総額は1.5倍です。すなわち、参加店舗数は少ないのですが、規模は大きいのです。

インターファクトリーは、コマースOneに比べ、四半期流通総額は84%ですが、1利用企業あたりの流通額は、8500万円と6倍です。ここでは、数は一層少ないのですが、規模は、さらに大きいのです。また、インターファクトリーとコマースOneでは、集まる店の経営活動の形が、かなり異なるようです。

すなわちここで「自社サイト作成支援」に参加する企業は、その各ECサイトにより、「規模」、「経営活動の形」などが異なっています。すなわち、各サイトには似たもの同志が集まっているのです。このように、産業別ではなく経営体の体質別に集まると集積効果が大きくなるのです。

大企業が圧倒的に強いモール型(注1)で、独自の立ち位置を確保したのがクリーマです。工芸品やハンドメイド品など、プロの作り手を含めて20万人が出品する消費者間取引のCtoCモール(注1)を運営しています。

このブログに登場したECサイトに参入している、個人事業主や中小商店の中には、大都市部ばかりでなく地方都市・山村地域の商店も、数多く入っています。山村地域の方が、むしろメリットが大きいと思われるのです。でも、積極性がある地域とそれに欠ける地域では、今後、格差が出てくるでしょう。山村振興を目指す地域にとっては、積極性が極めて重要なのです。

 

(注1)電気商取引(EC)モール=電子商店街。EC: electronic commerce(エレクトロニックコマース=電子商取引)の略語。モール:商店街。電子商店街: インターネット上で複数の商店のページ(電子商店)を一つのサイトにまとめて、様々な品物を販売するウェブサイトこと。サイト:ネットワークサーバ(群)。消費者間取引のCtoCモール:消費者と消費者の間の直接売買の電子商店街。

(注2)スタートアップ:「始める」「起こす」「立ち上げる」という意味を持つ英語表現。スタートアップ=スタートアップ企業。スタートアップ企業:新しく設立された会社のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社のこと。

(注3)交流サイト(SNS:Social Networking Service):人と人との社会的な繋がりを維持・促進する様々な機能を提供する、会員制のオンラインサービス。

(注4)ダイレクト・ツウ・コンシューマ(D2C Direct to Consumer):製造から販売までを垂直統合したビジネスモデルのうち、実店舗を介さず、インターネット上の自社ECサイトでのみで販売するモデル。インスタグラムなどのSNSを通じた消費者(コンシューマー)と生産者の情報交換が主力になる。最近、製造から販売までを直接結ぶビジネスモデル全体を、D2Cと呼ぶようにもなった。(参考資料2を参照)

(注5)参考資料2、2020年6月23日、日本経済新聞から引用。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年1月25日。

(2)椎野潤(続)ブログ(251) ダイレクト・ツウ・コンシューマー 一人一人の本当に欲しい花卉を供給する産地直販 2020年10月3日。

 

[付記]2021年2月23日。

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