コロナ危機のような、社会のサービス提供が、阻害される状況になると、新規事業領域を開拓するスタートアップ(注2)の活動が、俄かに活性化します。今日から3回にわたり、この状況を報告します。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年2月(№79)
□ 椎野潤(続)ブログ(290) 地方 コロナを逆手に採用増
大都市への人口集中緩和か 2021年2月19日
☆前書き
コロナ禍で人材募集が消極化している社会の中で、各地の中小の企業や個人事業主が、これまで採用が難しかった新卒の募集に挑戦して成功しています。コロナ禍のもとで、大都市部でも各地でも、人の集まる市街地から、自然色豊かなところへと、若者の移動が始まっています。日本経済新聞の1月24日の朝刊は、以下のように書き出していました。
☆引用
「慢性的な人手不足に悩む地方企業が、コロナ禍を逆手にとり、採用拡大に動いている。巣ごもり消費が好調な食品やスーパーといった業種や、脱炭素の動きを捉えた製造業の採用意欲が高い。職を求めて大都市から地方へ移る人の流れが広がれば、東京一極集中などの緩和につながりそうだ。」(参考資料1、注1から引用)
☆解説
群馬県のように、自動車部品の製造が盛んな地域では、地域に根差す企業は、新卒の確保は難しく、これまでは中途入社が中心でした。それが、コロナ危機の到来で、多くの企業が採用を手控える中で、新卒の採用に踏み出す企業も出現したのです。
豆腐製品大手の相模屋食料(前橋市)は、2022〜2023年春入社の正社員の採用を、2020年度の実績の2倍にしました。高校や大学の新卒生を中心に採用します。相模屋食料は、2020年度は、巣籠もり需要の影響で家庭向け豆腐製品が好調でした。今後の事業拡大を目指し、新卒採用を決断したのです。同社は『今は、積極的に人材を採用できる絶好のタイミングだ』と言っています。
広島県や岡山県で食品スーパーを手掛けるプレスター(広島市)は、地場の百貨店やスーパーなどの地場大手が、採用を絞るのに対して、2021年春の新人を2020年春の2倍に増やしました。同社は『今春に入社する社員は、10年後の中核人材です。このタイミングで、優秀な学生を多く採用できました』と言っていました。
在宅勤務の普及が進むなかで、地元以外からも、広範囲に採用しようとする動きもあります。リチュームイオン電池の検査装置を手掛けるアイ電子工業(栃木県大田原市)は、地元だけで、採用できない場合は、地元外からも採用し、テレワークで各地居住のまま、仕事をしてもらう計画です。
地方出店に伴い採用を増やす企業もあります。ブライダルジュエリー(花嫁の装身具、注1)の専門店ニューアート・シーマ(東京・中央)は、近場で購入したいカップルが、コロナ禍で増えたことから、地方出店を加速しています。2020年11月に出店した山形では地元採用を始めました。同社は「人材確保が容易になりました。大都市にいた優秀な人材が、地元に戻る動きがあります」と言っています。(参考資料1、注1を参照して記述)
☆まとめ
コロナの悪魔の襲来で、都市部も地域も、企業は採用を手控えています。この中で、地域の積極的な企業は、新卒採用にチャレンジして成功しています。個人事業主や小企業で、これまで新卒の採用募集をしても集まらなかった企業が、採用に成功しています。最近、コロナの自宅巣籠もりの中で、都会の若者の心の中に、自然豊かなところで働きたいという心の動きが出ています。ですから、今は、絶好のチャンスなのです。
このような心の動きは、東京のような大都市ばかりではなく、各地の中小の都会でも、若年者の心の中で動きはじめているはずです。山村も、この好機を逃さず、積極的に動くべきです。
株主の姿勢に影響を受けずに、近未来に賭ける先行投資が自由にできる非上場のスタートアップには、コロナの悪魔の襲来は凄いチャンスなのす。投資家も、コロナの下では有望な投資先が見付けにくく、小さい物件でも見込みのある有望な投資先を、丁寧に探しています。ですから、融資も受けやすいのです。
山村の非上場の小型のスタートアップ(注2)にとっても、今は、またとないチャンスなのです。(参考資料1、日本経済新聞、2021年1月24日を参照して記述)
(注1)ブライダルジュエリー:花嫁の装身具。
(注2)スタートアップ:タートアップ:「始める」「起こす」「立ち上げる」という意味を持つ英語表現。スタートアップ=スタートアップ企業。スタートアップ企業:新しく設立された会社のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社のこと。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年1月24日。
[付記]2021年2月19日。