コロナ危機の中で スタートアップが躍進(その1) ユニコーン狙いが広がる 上場は後回し成長を優先

2021年2月9日

コロナ危機のような、社会のサービス提供が、阻害される状況になると、新規事業領域を開拓するスタートアップ(注2)の活動が、俄かに活性化します。今日から3回にわたり、この状況を報告します。

林業再生・山村振興への一言(再開)

2021年2月(№76)

□ 椎野潤(続)ブログ(287) コロナ危機の中でスタートアップ躍進(その1) ユニコーン狙いが広がる 上場は後回し成長を優先 東京郊外への移住じわり広がる 2021年2月9日

 

☆前書き

コロナウイルスの襲来による社会の危機の中で、上場は後回しにして、成長を優先するスタートアップが増大しています。日本経済新聞の1月11日の朝刊は、以下のように書き出していました。

☆引用

「上場を急がず、企業価値10億ドル以上の未上場企業「ユニコーン(注1)」を目指すスタートアップ(注2)が増えている。海外投資ファンドやベンチャーキャピタル(VC、注3)の出資が相次ぎ、資金調達手段も多様化してきた。早期の黒字化を求める市場の圧力を避け、中長期で大きな成長を目指す企業が育ちはじめた(参考資料1、注6から引用)。」

 

☆解説

2020年の国内の新規株式公開(IPO、注4)は93社とリーマン・ショック前の2007年以前の水準になりました。2020年12月に、ヤプリ(参考資料2)などクラウド(注7)経由でソフトを提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス、注5)関連の上場が相次ぎました。コロナ危機のもとデジタル化を支える企業の株価は堅調でした。

スマートHRもSaaSの有望な一社です。同社のソフトで、社員の入退場時の書類作成などはオンラインで、簡単に済ませることができます。利用企業は、3万社を越えています。同社には、上場の期待が高まっていますが、同社は「もっと大型に育ってからの上場の方が合理的」と言っています。

このような発想になる理由の一つが、「時価総額が500億円以上なら、複数の機関投資家が参画できる」という見方があるからです。

株式市場公開(IPO、注4)の先送りの背景には、海外マネーの流入など、日本の未上場企業に流れる資金が、分厚くなったこともあるのです。

2020年には、米投資ファンドのベンチャーキャピタルが、電子商取引サイト開設支援のヘイ(東京・渋谷)に10億円を投じました。国内のベンチャーキャピタル(VC)のファンド新設も相次いでいます(参考資料1、日本経済新聞、2021年1月11日朝刊、山田遼太郎を参照して記述)。

 

☆まとめ

コロナ危機のもとで、日本のスタートアップ(注2)は、活況が続いています。この環境のもとでスタートアップは、上場を目指すのではなく、企業価値10億ドル以上の未上場企業ユニコーン(注1)を目指し始めています。すなわち、上場は後回しにして、ひたすら成長を急いでいます。これで、日本のスタートアップも力のある企業が、一気に増えてきました。

でも、一方で、早くに上場していた企業は、コロナ危機のもとで株価が急騰し、今、多額の資金を調達できているのです。2021年1月19日のブログに書いた、ノーコード(注8)専業企業のヤプリは、2020年12月に上場しましたが、同社などは、この恩恵を受けていると思われます(参考資料2)。

しかし、林業改革・山村振興に関する新ビジネスの開発を目指しているスタートアップには、そのような実績を、既に、あげている処は、まだ、少ないと思います。また、今、上場して、あまり高値がつくと、後で苦労することになると思います。ですから、林業・山村のスタートアップの方々は、このチャンスに、力強く実績を上げ、ひたすら、自社の成長を目指して頑張られるのが良いと思います。

 

(注1) ユニコーン=ユニコーン企業の略語:評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業。「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業を指す。

(注2)スタートアップ:「始める」「起こす」「立ち上げる」という意味を持つ英語表現。スタートアップ企業:新しく設立された会社のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社のこと。

(注3)ベンチャーキャピタル(venture capital、VC):ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社のこと。主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行い、資金を投下する。

(注4)新規株式公開(Initial Public Offering、IPO):自由な株式譲渡が制限され少数株主に限定されている株式を、株式市場に上場して、株式市場での売買を可能にすること。

(注5)SaaS=ソフトウエア・アズ・ア・サービス(Software as a Service)の略語(読みはサース または サーズ):必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態のこと。一般にはインターネット経由で必要な機能を利用する仕組み。

(注6)参考資料1、日本経済新聞、2021年1月11日朝刊、「上場は後回し 成長優先」という見出しの記事、山田遼太郎を参照して記述。

(注7)クラウド:クラウドコンピューティング (Cloud Computing)の略称:不特定多数でコンピュータを使用する仕組み。クラウド:団塊(不特定多数)を英語の「雲」に例えた表現。

(注8)ノーコード:プログラム技術を使った記述で、プログラムを書く必要がなく、ホームページやアプリケーションを作れる記述を指す。用意されたひな型から欲しい機能やデザインを選んだり、文章を入力したりと、直感的な操作で作り上げられる。

 

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年1月11日。

(2)椎野潤(続)ブログ(281) 誰でもアプリ 開発ひろがる ノーコード専業ヤプリ上場 ビームスなど450社が採用 2021年1月19日。

 

[付記]2021年2月9日。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です