過疎地支援の新制度始動 地域の灯火(ともしび) マルチワーカーとして多種業務で勤務

林業再生・山村振興への一言(再開)

2021年4月(№96)

□ 椎野潤(続)ブログ(307) 過疎地支援の新制度始動 地域の灯火(ともしび) マルチワーカーとして多種業務で勤務  2021年4月20日。

☆前書き

東京などの大都市に住む若者の中でも、自然豊かな地に移住したいと考える人は増えてきています。でも、そのような地域に移り住んでも、そこで安定した収入を得て生活できる見込みは、なかなか立たないのです。

しかし、その有望な働き方が現れてきました。春夏秋冬、季節に応じて仕事を見付けてくれて、世話をしてくれる体制が出来てきたのです。2020年秋には、全国88市町村で、チャレンジが始まりました。

☆引用

「コロナ禍をきっかけに地方暮らしを希望する人が増えている。しかし、最大の壁は『仕事』だ。特別なスキルがなければ、安定した収入は望みづらい。そこで、2020年6月に、過疎地域などでの人材の確保を後押しする『特定地域づくり事業推進法』が施行され、複数の業務を組み合わせて、マルチワーカーとして働いてもらう制度が動きだした。新制度はどこまで地方で広がるだろうか。」(参考資料1から引用)

☆解説

コロナの悪魔が襲来して、日本の社会も経済も、手痛い打撃を受けました。この中で、地域や地方都市は、一層、厳しい状況になっています。この中で、僅かな光の灯火(ともしび)となっているのが、2020年6月に施行された「特定地域づくり事業推進法」です。人口減少が止まらない過疎地域では、人手不足が、ますます、深刻です。通年で雇用を増やすことができる事業者は、限られているのです。一方、自然豊かな地に移住したいと考えている人達も、収入を安定して得る道がなければ、踏み切れないのです。

これを解決することを考えて提案されたのが、マルチワーク(注1)という働き方です。最近この働き方をするマルチワーカー(注1)が増えています。マルチワーカーを雇用するのは、複合協同組合です。この組合は、事業を行う事業者に、マルチワーカーを派遣します。ここでは、事務局の運営費と一人年間400万円を上限とする派遣従業員の人件費の半分を、国と市町村が助成します。残る半分は、派遣を受けた事業者の利用料で賄うのです。

総務省は、都市部からの移住者のほか、地域おこし協力隊の任期を終えた人や、地元の若者などを、協同組合の職員として想定しています。

この法律によって第1号として認定された組合は、島根県海士町複合協同組合です。海士町は、日本海に浮かぶ隠岐諸島の島にあります。人口2200人の町です。

この新聞では、第一号の認定に挑戦した人の例を、以下のように書いています。雪野瞭治さんは、2020年11月末に、ここに移住してきました。『まずは、1次産業を経験したい』と,年が明けた今年1月から、イカなどの定置網漁で働きました。早朝から昼すぎまでの勤務で、月給は18万円程度でした。当初は単身でしたが、今は妻と娘も呼び寄せて3人で暮らしています。

2021年3月末で漁師生活は終わり、4月からは地元の会社が運営する岩ガキなどの水産物を加工するセンターに、勤め先が変わりました。雪野さんは、原則、3カ月ごとに勤務先が変わるマルチワーカー(注1)なのです。この複合協同組合は、雪野さんに続いて関東と関西から20歳代の男女5人を採用しています。

海士町に続いて秋田県東成瀬村も組合を設立して3人を採用し、スキー場やホテルに派遣しました。北海道下川町も2人を雇い、小売店で働いてもらっています。長崎県五島市は、高卒の若者などに、様々な仕事を経験してもらう「インターンシップ型」を設けました。

総務省の調査によりますと、2020年11月末において、全国88市町村が同事業に取り組む計画になっていました。

島根県浜田市の「Biz・Coop(ビズコープ)はまだ」は、同制度を活用してユニークな取り組みを始めました。県外の音楽大学の卒業生に的を絞って職員を募集し、地元出身者1人を含む男女6人を採用しました。2020年4月から児童クラブや認定こども園などに派遣し、補助員として働いてもらっています。(参考資料1、2021年4月5日の日本経済新聞を参照して記述)

☆まとめ

日本の人口減少は、いよいよ、本格的になってきました。地域や地方都市の状況は、ますます、深刻です。政府や自治体は、これまで、これに頭を悩ませて、様々な対策を打ち出してきました。これを列記しますと以下のようになります。

(1)都会の子供などを対象とする、農山漁村交流事業。

(2)若者に、短期間働きながら地方暮らしを体験してもらう「ふるさとワーキングホリ

デー制度」。

(3)次世代の働き方の代表的なものとなると考えられているテレワークるよるワーケー

ション。

期間限定で定住してもらう対策もあります。

(1)最長3年間、国の支援で地方で活躍する地域おこし協力隊。

(2)過疎対策のマルチワーカー制度。

これらの努力もあって、自治体では、「最近、移住者が増えた」という声が聞かれるようになりました。でも、移住者は増えても、自然減が大きく、全体としての人口減少の歯止めはかかっていないのです。

しかし、このマルチワーカーは奮闘しています。島根県海士町は、その先進地域として、人口の社会増を、一部で実現しています。すなわち、過疎地域にとっても、応募する側にとっても、マルチワーカー制度は、利点が大きいのです。でも、働き始めた人が、地域に定着するかどうかは、また別の問題なのです。

海士町副業協同組合は、採用した職員の一年目は、「島を知る時間」と位置着けています。それで、3カ所以上で、それぞれ3カ月以上、勤めてもらう方針です。そして、二年目は、「島に入り込む」をテーマにして、それぞれの希望に沿って、より柔軟に勤務先を決めています。移住者は、それぞれ様々な夢や思いが持って島にきますが、島が求めていることを知ることを知ることも、極めて重要だからです。

このことは、これからの時代、若い人が企業に就職したあと、定着してもらうためにも、すごく重要です。雇う側も雇われる側も、共に努力しなければならない必須のテーマです。すなわち、マルチワーカー制度は、大都市でも、凄く重要なのです。(参考資料1、2021年4月5日の日本経済新聞(谷隆徳)を引用・参照して記述)

(注1)マルチワーク:一つの仕事のみに従事するのではなく、同時に複数の仕事にたずさわる働き方。

マルチワーカー:マルチワークに従事する人。

参考資料

(1)日本経済新聞、2021年4月5日。

[付記]2021年4月20日。

[コメント](最新情報、林業を主な派遣先とする町村)

林業を主な派遣先と考えている共同組合が、現在、4つあります。秋田県東成瀬村、北海道下川町、奈良県川上村、鳥取県日野町の4つです。この他に、高知県大豊町などから検討中との情報が来ています。

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