□ 椎野潤ブログ(塾頭 本郷浩二 年頭所感)
皆様、今年もよろしくお願いいたします。
元日に、能登半島で大きな地震が発生し、多大な被害が出ました。まずもって、亡くなられた方のご冥福と安否がわからない方のご無事をお祈りいたしますとともに、被災された方に心よりお見舞い申し上げます。私の実家がある金沢でも、主に液状化による住戸の全壊などの被害がありました。
昨日、1月15日は小正月でした。金沢では通常松の内と言われる7日にかかわらず、この日までが新年を迎える期間だったように記憶しています。左義長と言われる行事(書き初めの清書、正月の松飾りなどを焼いて、その火でお餅を焼いて食べる)が、この日に行われていました(現在は15日が成人の日の祝日でなくなったことから、土日やその年の成人の日に行われることも多いそうです)。新しい年が明けて、今日からは平常の気持ちに戻り、それぞれの取組をしっかり進めてください。
能登地震が発生し、短期的にも長期的にも困難なことが多いと思われる年初です。特に担い手、働き手の減少が今後の日本の社会のあり様を左右することになりそうです。コロナ禍の際にエッセンシャルワーカーという言葉を初めて聞きましたが、近い将来、私たちの生活を支えている公共、公益部門の働き手(エッセンシャルワーカー)が確保できなくなり、各々がその地域社会の一員としてエッセンシャルワーカーを担っていかなければならないのかもしれません。人口が多かったため、分業化に慣れてきた現代の日本人の暮らし方が変わっていかざるを得ないのかもしれません。それを様々な分野の技術革新で何とかやりやすくして、負担を減らして、すべてのことに対処していかなければならないのでしょう。
林業も木材産業も運送業も建築業もこれまでのような人手に頼ることなく、何らかの手段で省人化を図らなければ事業を継続してはいけないでしょう。すべての分野との働き手の取り合いになり、その帰趨が事業の生命線になることは必至なのです。大型パネル工法やモバイル建築の普及も、輸送距離を縮めたローカルサプライチェーンの構築も、ドローンtoハウジングも、デジタルデータの共有による様々に無駄にかかっている人手の解消も、AIやロボット等による人の様々な仕事の代替・合理化も、その業の持続性を確保する取組であり成功させなければなりません。そして、皆さんの取組が地域に波及することで、山村をはじめとした地方の社会(所得、暮らし、教育、医療)が維持されることにつながらなければなりません。私たちがやろうとしていることは、どのようなことであれ、そのようなことにつながるのだと思います。
一方で、地域に人が少なくなることで起こってくる様々な問題にも工夫して対処しましょう。まずシカ・サルやクマなど野生鳥獣の問題は地方の暮らしを脅かすことになりかねません。森林の管理経営も、究極的には持続可能な利用(伐採・搬出)のほかはメンテナンスフリーを目指さなければならないのかもしれません。これらは、人口が減少することが前提とする観点で、取組の先を考えることが必要となるでしょう。また、住宅の必要数が減り、新設の着工数も長期的に減少していくものと思います。木材の使い途、森林の使い方も変わっていかなければならないのです。さらに、都市との人、物、金のつながりを作ることによって、地方の暮らしが成り立つようにすることができないか考えなければなりません。今の日本の経済・社会も考え合わせると、都市だけでは日本は生きていけないでしょうし、地方もポツンと一軒家状態の自給自足はできるかもしれませんが、都市とつながらなければ持続的な存立は厳しいと思っています。
塾頭と言っても名ばかりで、私には、このような問題に答を見つけることすらできていませんが、皆さんと一緒に勉強し、皆さん各々の取組を鼓舞することで、光明を見出したいと思う年初でした。