□ 椎野潤ブログ(大隅研究会第19回) 大隅地域の林業における課題
おおすみ100年の森副理事
大隅森林組合 下清水久男 組合長
大隅地域では、15年程前から主伐が進んでいる。その為、木材生産や再造林及び下刈が県内でも抜きんでている。一時は苗木不足もあったが、今は解消されつつある。再造林については、大隅地域の林業事業体の意欲も年々上昇しているが、問題になっているのが、県外の林業事業体が主伐した山林は再造林を行われない山林が多くみられる。また、下刈作業が一番の課題である為、大隅地域の林業事業体は下刈面積と調整しながら主伐に取り組んでいる。下刈作業に画期的な機械化が進めば人手不足も解消の方向へ向かうのではないかと考えられる。下刈の2回刈りが必要な山林にも手を入れることが可能となってくると思われる。
農業・漁業に比べて、林業は外国人労働者の受入も遅れており、このことも深刻な人手不足の原因の一つであり、コンテナ苗の植付けや刈払機による下刈作業は比較的危険度も低く対応しやすい作業もあり、この取り組みも急務である。
立木の売買についても課題が多い。山林所有者の中で、不在村者や子供が県外に移住している又は山林の相続を敬遠する等で土地込みの売却を希望するケースが多くなっている。再造林や下刈の管理契約を条件提示しても売却希望者は土地込みでの購入者と契約を行う。そういった山林は小面積で県外の林業事業体が購入するケースが多く、再造林がなされない。このような問題は国が掲げている2050年カーボンニュートラルや循環林形成への妨げとなっている。今後は県を中心として、市町村・林業事業体と合同で取り組む課題である。このような課題を解消して行けば大隅地区の林業並びに鹿児島県の林業発展へと繋がっていくと考えられるが、今後、どのような取り組みをしたら良いか、模索していきたいと思います。
☆まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫
いま主伐期を迎えている人工林は、林業従事者が30万人以上いた時代に造成されたものです。獣害も少なく、下刈りも行われていたでしょうが、間伐期を迎える頃から手入れ不足となっていきました。いま林業従事者は5万人を切っています。植林された当時と同じことをしていたら手入れ不足になることは目に見えています。ようやく全土によみがえってきた高齢人工林を少ない労働力でどうやって後世に遺していくか、重要な時期に直面しています。一方で、後継者がいなかったり、不在村であるために、換金して手放したい森林所有者も多いでしょう。そこで県外の林業事業体が入ってくるのでしょうが、森林組合は忸怩たる思いで見ているしかありません。
セオリーどおりに下刈りしようとしても、昨今の夏の暑さは殺人的です。実際、下刈り時に熱中症で亡くなられた方もおられます。事業主は管理責任や補償も問われるリスクがあります。そこで下刈作業に画期的な機械化が望まれているわけですが、少なくとも熱中症対策をとったり、日陰を残す伐採方法を考えなければならなくなりました。海外の熱帯地方では、日本企業が大規模造林をしていますので、現地の人は育苗や造林技術も持っておられます。日本で戦力として働いていただくにしても、日本人と同じ収入や社会生活を約束しなければなりません。
よその人が伐りっぱなしで再造林しないのは困りますが、補助金を活用して再造林を請け負った後に、土地込みで森林を購入し、自社林にしていくビジネスもあらわれてきています。地元の事業体が、やる気と能力、責任を持って再造林された森林を育てていくならば、やむを得ず森林を手放したい人の受け皿となりえます。地元の信頼を損なわないためには、事業体の適正な技術評価が必要ですが、何よりも住民の評判が大事ではと思います。