私が16年間見続けた中で感じる、林業の持つもう一つの大きな魅力・可能性について書きたいと思います。私は優秀な人材、先端技術、といった言葉を使って森林連結経営の持つ可能性を説明してきました。しかしそれは一方で、従来の資本主義が振りかざしてきた効率性信仰、強いものが勝つという思想と地続きのものであり、私
森林連結経営の実践、そして森林直販を実現するうえで、「信頼」は重要な基盤であり、利益の源泉となります。なぜなら、建築サプライチェーンの強化が最大の利益を生み、その実態は全てのデータの共有にあるからです。企業は普通、原材料の価格や量、製品の販売先ごとの単価、人件費などを公にしません。収入も損失も、隠す
従来の資本主義は、果てしなく横に広がる経済です。最安値の原料を探して大量に作り、欲しい顧客がいればどこまでも運びます。それがイノベーションを生み、圧倒的な富の源泉となってきました。何万点もの複雑な部品を組みたてる自動車産業や、数百万通りの実験やデータ解析から有効な成分を作り出す製薬など、その手法が適
森林連結経営の担い手として提案したいのは、山主・木こり・製材・大工(工務店)・不動産といった人々が、垂直統合組織を作ってオープンな経営を行うことです。森林が利益をもたらすなら、再生産を考えるのは当然でしょう。採算の見込めない場所は別として、適地への再造林を高値での原木買い取りの条件とする、垂直型の組
山と生活者を最短距離で結ぶ「森林直販」の実現、そしてバイオマスへの安定的な燃料供給と併せ、山の価値を最大化して維持することを目的とするのが「森林連結経営」です。ではそれを実際に行うのは、どんな人達なのでしょうか。森林組合は山主を構成員とする共同組織ですが、補助金に頼る運営が長く続いた結果、多くが
これまでの日本の木材生産・流通は完全なプロダクトアウトでした。買い手を探してどこまでも運び、買い叩かれることを繰り返してきたのです。在来木造に使われる部材の種類の多さは在庫量を膨らませ、利益は輸送コストに消えていきました。最終製品までに多くの事業者の手を経る必要から、製材品の質に対する責任はとことん
私は2007年からの15年間、様々なセミナーや講習に参加し、日本の各地を訪ねて多くの人に教えを乞うてきました。FSCジャパンや、「文化遺産を未来につなぐ森づくり会議」などの団体にも参加し、森林再生に少しでも貢献する方法を探ってきたのです。一般企業で経理や営業管理を担当する日々の中、週末や有給休暇を使
書籍のための原稿を書こうとすると、数字の根拠や出典をいかに厳しくチェックされるか、それを肌で感じたことは大きな学びでした。ブログは気楽なもので、間違いに気づいたり指摘をいただいたりした場合、後で修正することも可能です。そもそも、自分一人で書いているので、恥をかくのも自分だけです。しかし書籍は訂正がで
2019年の初冬、自分達の行動が社会にどうインパクトを与えていくのか、それを体系的に表すロジックツリーと呼ばれる関連図を、私は苦労して書き上げました。その中で考えたのは、林業や木材産業の関係者だけでは問題は解決できない、花粉症という、ある意味タブーな言葉を使ってでも、多くの人の関心を引き付け、資金や
2019年の秋、私はある経営者団体の総会にオブザーバーとして参加しました。その団体は、企業活動を通じて社会課題の解決をしていくことを理念に掲げており、「この木どこの木?」キャンペーンなど私の活動を知った知人が誘ってくれたのです。当時も森林を巡るビジネスに関心を持つ人がかなりいたのですが、林業・木