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モバイル建築の高い完成度

高機能な住める動産、モバイル建築をこの目で見て来た。茨城県境町にある「モバイル建築さかい研究開発センター」(https://mobakyo.or.jp/)の敷地には、ある企業がふるさと納税を活用して建て、町に寄贈した複数の建物が並んでいる。モバイル建築を構成するユニットは、一つなら事務所や単身者

製作過程の緻密さが見える家

「自分のやったことが目に見える仕事、それが一番いい」ある男性が、北千葉にある大型パネル工場を見学した帰りにそう呟いた。ちょうどその日はモデルハウスのお披露目会で、紀州材の柔らかな木目がシンプルな家具と調和した、ため息の出るほど美しい家を見た後で、私たちはその躯体を製造した工場を訪ねたのだ。いつも

動かせる家の利点

自治体ガチャ、という言葉はまだ聞かないが、もしかしたらそのうち流行るかもしれない。住んでいる自治体が、人口減少で行政サービスが滞るような事態に陥るリスクだ。総務省が以前発表した統計でも、将来的に自治体の半分近くは消滅する。賃貸なら転居すればいいが、家を買ってしまったらどうしようもない。広い敷地や自然

サンゴ礁を作った森

広大なサンゴ礁を作ったのは太古の森。そんな心惹かれる学説を知った。オーストラリアの東海岸に2千キロにわたって続くグレートバリアリーフ。世界最大のサンゴ礁で、太平洋の荒波から海岸を守ってくれていることから、大きなバリアという名がついている。 美しく海洋生物の宝庫である貴重な

気候変動と樹木

21世紀は水の時代と言った人がいた。水が様々な場所・局面で大きな鍵を握るという意味だ。地球温暖化の影響は、まず水のふるまいの変化に現れる。ハリケーンやサイクロン・台風が大型化し、集中豪雨は「数十年に一度の大雨」という表現が適切なのかと疑いたくなるほど頻発する。それらの被害は深刻で、今まさに水害の危険

宝物の家

木造住宅の価値とはどういうものだろう?自分がもし施主だったら、美しい木目を眺め、木の香りに癒されたい。動線を考え抜いた使いやすい間取り、暑さ寒さに悩まされない高断熱、椅子にかけた時に目に入る全てが調和して心地よく、人を招けば共に楽しみ、外から帰るたびに安心感と喜びに包まれる。そんな家が自分の経済力の

地域の材で高性能な家を

「家のつくりやうは夏を旨(むね)とすべし」とは徒然草の一節だ。火を焚けば暖を取れるが、暑いのを冷やす術はうちわや打ち水くらいしかなかったから、何よりも風通しを優先し、大きな開口部を作ったのだろう。しかし今や、夏の高温は風通しの良さで凌げるレベルではなくなった。冬の寒さも、居室だけを温めるこれまでの方

樹木に蓄積された時間

樹木は時間の貯蔵庫だ。巨木の年輪には過去の気象や災害の影響も刻まれている。成長するのは樹皮に近い部分だけで、古い細胞は形を留め、育った時の環境や状態を映す記憶媒体のようだ。私たち動物の体は逆で、古い細胞が死んで新しく生まれ変わり、常に置き換わっている。分子生物学者の福岡伸一氏によれば、分子レベルでは

山を持つということ

山主さんってどんな人だろう?昔は材木が高値で売れたから、広大な森林の所有者は大富豪だった。一雨降るごとに木が太って財産が増える、そんな表現をした山林王もいた。しかし今は木材の価格が下がり、先祖からまとまった面積の森林を受け継いだ人達も維持に四苦八苦している。知人のある林家さんは十数haの土地持ちだけ

木材建築のデジタル化

木は家になる。でも現代の住宅は木材だけではできない。ドアやサッシはもちろんのこと、壁の内側には断熱材、外側には防水シートが必要だ。都市部の木造だとそこに耐火ボードも加わり、省エネを実現するには外側にも分厚い断熱材を貼ることになる。その複雑で厚みのある壁と、上に載る屋根をどうやって隙間なく接合するのか

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