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気候変動と樹木

21世紀は水の時代と言った人がいた。水が様々な場所・局面で大きな鍵を握るという意味だ。地球温暖化の影響は、まず水のふるまいの変化に現れる。ハリケーンやサイクロン・台風が大型化し、集中豪雨は「数十年に一度の大雨」という表現が適切なのかと疑いたくなるほど頻発する。それらの被害は深刻で、今まさに水害の危険

宝物の家

木造住宅の価値とはどういうものだろう?自分がもし施主だったら、美しい木目を眺め、木の香りに癒されたい。動線を考え抜いた使いやすい間取り、暑さ寒さに悩まされない高断熱、椅子にかけた時に目に入る全てが調和して心地よく、人を招けば共に楽しみ、外から帰るたびに安心感と喜びに包まれる。そんな家が自分の経済力の

地域の材で高性能な家を

「家のつくりやうは夏を旨(むね)とすべし」とは徒然草の一節だ。火を焚けば暖を取れるが、暑いのを冷やす術はうちわや打ち水くらいしかなかったから、何よりも風通しを優先し、大きな開口部を作ったのだろう。しかし今や、夏の高温は風通しの良さで凌げるレベルではなくなった。冬の寒さも、居室だけを温めるこれまでの方

樹木に蓄積された時間

樹木は時間の貯蔵庫だ。巨木の年輪には過去の気象や災害の影響も刻まれている。成長するのは樹皮に近い部分だけで、古い細胞は形を留め、育った時の環境や状態を映す記憶媒体のようだ。私たち動物の体は逆で、古い細胞が死んで新しく生まれ変わり、常に置き換わっている。分子生物学者の福岡伸一氏によれば、分子レベルでは

山を持つということ

山主さんってどんな人だろう?昔は材木が高値で売れたから、広大な森林の所有者は大富豪だった。一雨降るごとに木が太って財産が増える、そんな表現をした山林王もいた。しかし今は木材の価格が下がり、先祖からまとまった面積の森林を受け継いだ人達も維持に四苦八苦している。知人のある林家さんは十数haの土地持ちだけ

木材建築のデジタル化

木は家になる。でも現代の住宅は木材だけではできない。ドアやサッシはもちろんのこと、壁の内側には断熱材、外側には防水シートが必要だ。都市部の木造だとそこに耐火ボードも加わり、省エネを実現するには外側にも分厚い断熱材を貼ることになる。その複雑で厚みのある壁と、上に載る屋根をどうやって隙間なく接合するのか

林業と土木

林業と土木はとても近い、建築よりもずっと近いだろう。林業機械も先端部分を除くベースマシンは土木用と同じだし、木材の搬出に使う道作りは正に土木工事だ。地形や地質を見ながら、搬出が楽にでき、長持ちするように作業道を切り開く。崩れないようのり面の高さを抑え、水はけを考慮した勾配をつけ、一定間隔で排水溝を設

「十億本の杉を伐る」

「十億本の杉を伐る」 五年ほど前、私が考えていた本のタイトルだ。手入れされていない人工林の1ha当たりの本数をざっと2000本とすれば50万ha、全国の杉林の8分の1くらいに当たる。こんな乱暴な標題を考えたのは、都市に暮らす人の意識を日本の森林に向けさせるのに、花粉症というキーワードが有効かもしれな

椎野ブログ転載ー「再造林型林業協定」の内容と意義

先日、前回のブログでお伝えした「再造林費用を上乗せした価格での木材取引協定」の内容が明らかになりました。ウッドステーション株式会社(以下ウッドステーション)のプレスリリースによると、大手の2×4建築資材供給会社であるウイング株式会社(以下ウイング)と100%再造林を実施してきた佐伯広域森林組合(以下

森と生きるために-「再造林型林業協定」④持続可能な国産材利用へ

再造林費用を価格に上乗せする今回の協定、ウッドステーション株式会社のプレスリリースにはこう書かれています。「本協定では、ウイングと佐伯森林は、再造林に必要とされる費用捻出を想定した木材価格で合意し、年間取引量は 10,000㎥以上と定めています。再造林に関わる費用や負担を透明化し、その応分責任を取引

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