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林業政策を変えるには

林業について、当事者に詳しく話を聞き、具体的な事例を書くようになってから、厳しくもありがたいご意見を頂くことが増えた。書籍にも書いたとおり、森林や林業に関心を持って全国を歩いた16年間、私は物見遊山の客に過ぎなかったと改めて思う。観光地を巡るように、紹介された事業者さんの話を聞いて、それを鵜吞みにし

森林組合の新しい姿

「森林組合が地域の森を守る。」ごく当たり前のことと思うかもしれないが、私が森林・林業にのめり込んだ16年前、「森林組合はどこもやる気がなくてダメ」という話をどれほど聞いただろう。「補助金がもらえる範囲で同じ仕事をするだけ。」「上層部が旧態依然で新しいことをやろうとしても潰される。」「やる気を持って入

伐採跡地でかぶを栽培

皆伐跡地を焼き畑にしてカブを栽培する、そんなユニークな取り組みを知り、詳しく話を伺った。山形県鶴岡市の温海町(あつみまち)森林組合。事務職から山仕事・製材・運輸を含め30人で、年間約20,000㎥の木材を生産し、うち8,000㎥を自前の製材所で加工している。特徴的なのは、皆伐跡地に火を入れて焼き

木材とプラスチック

マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題になり、脱プラスチックが叫ばれるようになった時、私はこれで木材が生き残れると感じた。街には、別の素材の表面に木目調のプリントを貼ったエセ木材があふれている。高級とまではいかないが本物感を売りにした飲食店でも、内装のほとんどが木目のプラスチック、というのはよ

正しい問いなのかを疑うこと

森を守るためのコストをなぜ消費者が負担しなくてはならないのか?この問いを発したのは、建築・不動産業界のコミュニケーションギャップを解消し、幸せな暮らしを実現することを謳う会社の代表である。逆に言えば、しっかりした理由があり、それを自分が納得できたならば、施主をも説得してみせるという自信に裏打ちされた

外にいるから見えるものを探して

明治中期、松江の朝の町には、米を突く音が響いた。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)はそれを、「日本で最もあわれな音、日本という国の脈拍だ。」と表現した。あわれという言葉は、最近では「非常に可哀想で強い同情を感じる」という意味に使われることが多い。けれど八雲が言いたかったのは、「もののあわれ」の感情

森林を最上位に置く産業の実現

「機械はむしろ遊ばせています」先日話を聞いた山形県のある森林組合のK氏の言葉に、一瞬耳を疑った。高性能林業機械は一台数千万円もする。できるだけ稼働率を高めようと考えるのが普通だと思っていたからだ。K氏は続けてこう言った。「機械は置いておくだけなら傷みません。人がシームレスに動くために、むしろ機械は余

「自分の仕事は自然をちょっと手助けすること」朝から印象深い言葉を聞いた。石川県から委託を受けて、白山の登山道を整備している男性の話だ。丈の高い草や笹が茂る登山道を何とかしたいと、最初の2~3年はひたすら草を刈っていた。白山の道は自分が守る、と気負っていたが、そのうちある事に気

山梨の天女山

「顧客接点を増やして売上を伸ばす」通常のビジネスではごく普通の営業手法だが、林業でこれを実行している企業は稀ではないだろうか。一般的な林業会社は、自社林を持っていればその山から、無ければ近隣の山主さんから立木を買って木を伐採し、市場に出したり契約工場に直送したりして現金化する。少しでも高く売りたいが

上流と下流の歴史

上流と下流、これは単に流域の位置を表す言葉ではなく、社会的な地位や豊かさを表す言葉でもある。昔、川の下流は湿地が多く、人々は水の便が良い、中流より上の地域に住み着いた。水害は分家の災いという言葉もあったらしい。経済力のある本家は水害の心配が無い場所に居を構え、分家の人々はより下流に住むしかないので、

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