森を守るためのコストをなぜ消費者が負担しなくてはならないのか?この問いを発したのは、建築・不動産業界のコミュニケーションギャップを解消し、幸せな暮らしを実現することを謳う会社の代表である。逆に言えば、しっかりした理由があり、それを自分が納得できたならば、施主をも説得してみせるという自信に裏打ちされた
明治中期、松江の朝の町には、米を突く音が響いた。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)はそれを、「日本で最もあわれな音、日本という国の脈拍だ。」と表現した。あわれという言葉は、最近では「非常に可哀想で強い同情を感じる」という意味に使われることが多い。けれど八雲が言いたかったのは、「もののあわれ」の感情
「機械はむしろ遊ばせています」先日話を聞いた山形県のある森林組合のK氏の言葉に、一瞬耳を疑った。高性能林業機械は一台数千万円もする。できるだけ稼働率を高めようと考えるのが普通だと思っていたからだ。K氏は続けてこう言った。「機械は置いておくだけなら傷みません。人がシームレスに動くために、むしろ機械は余
「顧客接点を増やして売上を伸ばす」通常のビジネスではごく普通の営業手法だが、林業でこれを実行している企業は稀ではないだろうか。一般的な林業会社は、自社林を持っていればその山から、無ければ近隣の山主さんから立木を買って木を伐採し、市場に出したり契約工場に直送したりして現金化する。少しでも高く売りたいが
上流と下流、これは単に流域の位置を表す言葉ではなく、社会的な地位や豊かさを表す言葉でもある。昔、川の下流は湿地が多く、人々は水の便が良い、中流より上の地域に住み着いた。水害は分家の災いという言葉もあったらしい。経済力のある本家は水害の心配が無い場所に居を構え、分家の人々はより下流に住むしかないので、
松明を灯し続ける人、椎野潤先生にお会いした。先生は早稲田大学の元教授で、日本にサプライチェーンという言葉と概念を紹介した方だ。20年以上前に、中小工務店と専門工事業者、建材販売業者、プレカット工場などが集まる「鹿児島建築市場」という組織を作り、建築のデータ連携を進めようとされた。一時は多くの都道
林業DXがリアルに普及する、今はその前夜かもしれない。これまでも、IT技術を用いて管理する森林の資源量や質をデータ化し、作業の効率化や安全性の向上などに生かしている事業者はいた。しかし、高性能なドローンやモバイルレーザーは安いものでも一式500万円。補助金で購入したとしても、
なぜ再造林をしないのか?木材の価格が安すぎてコストが賄えない、というのが通説で、私自身も一般の方にはそう説明してきた。しかし実際には、各種の補助金を使えば再造林費用の9割は助成される。残りの1割を山主さんが出し渋るというのは確かにあり、100%再造林を行っている佐伯広域森林組合でも、その説得に苦
時が解決するものは結構多い。学生時代の失恋の痛み、やらかしてしまった大失敗、子供のアレルギーも大人になるとかなり改善するらしい。1990年代、国産材自給率の低下を食い止めようと、2×4材の国産化に取り組む試みがあった。しかし当時の杉はまだ若くて細い間伐材、北米のSPF(スプルース・パイン・ファー