文月ブログ

森は止まらない

森は止まれない。日光と水があれば、どこまでも成長し続ける。ある時、市民の散策路として整備された森林公園も、20年も経つと高層の樹木が大きくなり、中低木の光を遮って枯らしてしまう。樹木の名を記載した標識だけが残り、対象の低木は跡形もなかったりする。
私が以前活動していた箱根でも、数十人のパークボランティアが区域内を歩き、問題のある個所を見つけて町の管理事務所に通報しても、予算や人員の関係で修復されないことがあった。国立公園でさえそうなのだから、人口減少に晒される地方にとって、人為の環境を維持するのはそれだけで大変なことなのだ。
日本の森林の成長力は凄まじい。裸地が勝手に森林になるような土壌と気候は、日本とマダガスカルくらいだと聞いたことがある。ならばその膨大な成長エネルギーを、産業として利用するのが賢い向き合い方だと誰でも考えるだろう。にも拘わらずなぜ有効活用が進まないのか、大きな理由の一つは、林業労働者が高学歴人材に相応しい職業と見做されていないからではないだろうか。日本の労働人口の深刻な減少を、外国人に頼って埋めるのはある程度仕方がない。しかし、自分がやりたくない事を、いつまで他国の人が引き受けてくれると思うのか、私は不思議で仕方がない。
測量・造林・伐採・製材・木材販売・・・知見を持った専門家の能力をAIに取り込み、IT技術を駆使しながら地域の人々と協働できる若者を惹きつけて、林業を先端産業にする。他の多くの産業も目指す在り方を林業が実現するには、現状の延長ではなく飛び越える発想が必要だ。
止まらない自然は、同様に成長を止めない人間に微笑む気がする。

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