文月ブログ

林業ビジネスチャレンジ-「手作りもくレース」その2

土佐嶺北の「ばうむ」さんの協力を得た「手作り用もくレース」の思わぬ楽しさ・美しさは、それまで私が苦手としていた、他者を巻き込んで行動する機会を広げてくれました。ばうむさんも、ワークショップ用ならばとこの商品の使用を許可し、卸してくれました。
そんな折、私の挑戦を知る知人の紹介で、足立区にある都市農業公園という施設のイベントに、手作りもくレースの体験コーナーを出展することになったのです。私以外のスタッフは、木材関係の知人や学生さんにお願いしました。ワークショップの開催に必要な備品として、彫刻刀や軍手、ゴム製の下敷き、油性マーカー、フェルト、テーブルクロス、予期せず落ちてしまった部分をくっつける木工用ボンド、万一に備えた救急セットなど、様々なものを量販店で購入しました。
開催のため、作り方のマニュアルの他に私がもう一つ準備したものは、参加者に配る説明文です。綺麗なもくレースに惹かれて、作りたいと来てくれた人は、「日本の森林の現状は・・」などという話を聞きたい訳ではないでしょう。お子さん達なら尚更です。ただ、お渡しして、読んでくれた人には、この杉が高知県で育ったこと、日本には手入れされない森林が沢山あり、国産材を使うことがその状況の改善につながることを知ってもらえるチラシを作ろうと思いました。
そんな準備を経て、迎えた当日、果たして来てくれるだろうかという私の心配を他所に、多くの人が手作りもくレースを体験してくれました。参加者は、彫刻刀を持つきき手の反対の手に軍手をはめ、ゴム製のマットの上で、コースターに印字された線に沿って、好きな部分を彫刻刀で削り、穴を開けていきます。面倒なら4か所程度、やりたければ24か所全部開けることもできます。終わったら、油性マーカーで好きなように色を塗り、下に敷くフェルトの色を選んで、セットで持ち帰ることができます。時間は20分から長い人で1時間程度、費用は800円に設定しました。大人だけでなく子供さんでも、小学校高学年なら全く問題なく楽しめます。時にはもっと小さな子が、最初はぎこちない手つきなのに、慣れると驚くほどの集中力を発揮し、24か所全ての穴を掘りぬくケースもありました。常識を軽々と超えていく、子供の発想と能力の素晴らしさ、それはこの後何度も実施したこのようなイベントを通して、毎回私に嬉しい驚きを与えてくれたことを覚えています。
手作り用もくレースのワークショップは、この翌年には東京都の「木と暮らしのふれあい展」、その後も生活用品メーカーの主催する大規模なアウトドアイベントなどで開催し、多くの人々に体験していただきました。
そこで得た最大の気づきは、人は「物」に対して800円を払うことはためらうが、「体験」に対してなら喜んで支払うということです。特に親は、子供が「買って」と言っても簡単には買い与えません。しかし「やってみたい」と言う言葉には進んで財布を出し、子供の熱心な姿に目を細め、カメラにその様子を収めるのです。私には子供はいませんが、親が子の成長をどれほど願い、そのための支出を惜しまないかを実感する、貴重な経験となりました。
アウトドアで開催したイベントの後は、自身の本業の忙しさなどもあり、ワークショップは実施していません。道具類一式はいつでも使えるよう箱に収めて、時折中身の点検も行います。いずれまたご縁があれば、木でできたモザイクのような美しいコースターを手作りする喜びを、多くの人と分かち合う日が来るかもしれません。

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