文月ブログ

知られざる木材の「乾燥」工程

山には沢山の木が生えています。その中でも、色々な木が雑多に生えている雑木林と違い、杉や檜など同じ種類の木が規則的に植えられているのが「人口林」です。人口林は、建物や船を造るのに適した真っすぐな木に育てやすいという理由で、人が苗を植えて世話をしてきた森です。
木は大きく育つのに数十年、杉や檜の場合は普通50年以上の年月がかかりますが、それに加えて、使う時にも大変な手間がかかります。木を伐り倒し、用途によって3mや4mといった長さに切り、皮を剥いて柱や梁などの角材に製材します。その後、乾燥という大事な工程に入ります。
木は立った状態から、伐った後も大変な量の水分を含んでいます。その量は樹種や季節によって違いますが、杉は特に多く、200%、つまり乾いた状態の自分の重量の倍もの水分を内側に抱えている場合があります。そのまま建築に使うと、水分が抜けるにつれて反ったり曲がったりしてしまうため、熱を加えてあらかじめ水分を抜く作業、それが乾燥工程です。
重油などの燃料を焚いて、一週間~二週間もの間、乾燥庫に入れておかなくてはならず、乾燥が足りなくても、乾燥し過ぎても価値が下がってしまいます。
木材は一本一本違いますから、水分の含有量も、水の抜けやすさも様々で、これを丁度よい水分量に落とすのは至難の業です。体積と重量を図り、なるべく均一な物を乾燥庫に入れるなど、製材所では工夫をこらしています。一般の建築に使用する際に必要なJAS規格に合わせるには、含水率を15%から20%程度まで落とさなくてはなりません。
一般の人が木材に触る時は、既に乾いた状態にあるため、木材を利用するのにこのような作業が必要だという事は、ほとんど知られていません。
昨年NHKで放映された朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」では、主人公が森林組合に勤めており、学童机の天板を、ビニールハウスに入れて急いで乾燥させる話が出てきました。木材の乾燥に関する話題が朝ドラに初めて登場したこと自体、私には感無量でした。
木は山で伐ったばかりの時は水浸しです。だから人が使えるようになるまでに、多くの人の手を経て、長い時間がかかるのだと、少なくとも建築に関わる人々には知ってもらいたいと思います。その上で、山主、きこり、製材所、工務店、大工、そして家を建てる人、関わる全ての人が満足できるような方法を見つけていきたい、そう思う毎日です。

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