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木の命への作法

ヨーロッパの石造りの家は何百年も使い続けられている。地盤沈下やファサード(建物正面のデザイン)の重みで壁にヒビが入っても、400年持ったのだからすぐには壊れない、と意に介さず、補修をしながら人は住み続けている。地震や台風の無い国をうらやんでも仕方がないが、日本のように一生に一度の買い物が子孫に遺せる

FSCの普及を妨げるもの

FSCという森林認証(森のエコラベル)がある。欧米・オーストラリアをはじめ、最近は香港・中国などでも認知度が高まっているそうだ。日本では紙製品がかなり浸透してきたものの、木材では中々広まらず、認証を取得した森林も、その森から出た木材を使った製品もとても少ないのが現状だ。FSCは世界統一の原則や地

冒険遺伝子は森を目指す

私達は冒険遺伝子を持っていて、それがホモ・サピエンスをアフリカから全世界へ拡散させる後押しをしたという説をテレビ番組で知った。人口が増え過ぎて食料が不足したり、他の部族から攻撃を受けたりといったやむを得ぬ事情だけでは、大規模で急激な拡散の説明がつかないらしい。先が見えなくても新天地に賭けてみる、

カラマツ無垢梁の家

木島平のカラマツ梁の家が松本市内に完成し、見学会に行ってきた。ドローンや地上モバイルレーザで計測したデータを解析し、建築図面から割り出した部材情報とマッチングさせた梁材。それを使って実棟の建設まで行ったのは、恐らく世界初だそうだ。レーザデータでは腐れや傷など表皮の情報が取れず、皮の厚みが想定を大

春を待つ森

先日、林野庁の高官を訪問するウッドステーションの塩地会長に同行した。会長が開発中のシステムを使えば、いずれは誰でも建築図面から必要な部材の種類や量を簡単に抽出できるようになる。地域に林産クラスターを作り、部材情報を基に原木から建築部品を一貫生産する、そうなれば木材価値を一気に上げられるという会長の提

林業ICTで所有の壁を超える

せっかく県を上げてスマート林業を推進し、微地形図の公開も実現したのに、企業がいざそれを活用しようとしても森林の所有者がわからない。所有者はいても境界がはっきりしないので伐採できない、そんな声を聞いた。今年の4月から土地の登記が義務化されるが、これまでは任意だったため、お金にならない山林は捨て置かれて

林業とICTの全体像を追う

森林産業の実現のために、山側のICTは今どんな状況なのかを知りたいと思った。関連雑誌にはスマート林業の実例などが紹介されているが、実際に現場にどの程度浸透しているのか、誰に聞いても良くわからない。自分で調べてみることにした。林野庁やいくつかの自治体、森林組合や林業会社、レアなところでは木材運送を

不都合な現実に向き合う

ファンタジーは甘く美しい。それが若者の将来を拡げる夢に繋がって欲しいと思う一方、現実を覆い隠すために使われてはいないか、そこは注意が必要だ。最近、都市部で木造高層ビルの建設がブームになっている。国産材を使い、カーボンニュートラルだ、SDGsだと企業は自社の取り組みを宣伝するが、多くの場合、そ

AIと森で働く日

最初に購入したパソコンのメーカー名に「ベル」という言葉が含まれていたので、私は自分のメールアドレスにも「bell」を使うことにした。フランス語で美しいという意味で、電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルの功績や、聾者への教育に力を注いだその人格からも、響きの良い言葉だと感じてきた。調べ

次のステージに向けて

直感を信じて、価値のある人に食い下がる。お花畑と言われようと、60も過ぎて何をやってきたのかと呆れられようと、自分の無能さに背中が凍える思いをしながら、それでも「国産材を」と言い続けた。決してエリートではない普通の人達が大きなリスクを取り、コツコツ努力し、見違えるような組織になった、その何気ない

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