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椎野先生から生まれる銀河

松明を灯し続ける人、椎野潤先生にお会いした。先生は早稲田大学の元教授で、日本にサプライチェーンという言葉と概念を紹介した方だ。20年以上前に、中小工務店と専門工事業者、建材販売業者、プレカット工場などが集まる「鹿児島建築市場」という組織を作り、建築のデータ連携を進めようとされた。一時は多くの都道

林業DX普及前夜

林業DXがリアルに普及する、今はその前夜かもしれない。これまでも、IT技術を用いて管理する森林の資源量や質をデータ化し、作業の効率化や安全性の向上などに生かしている事業者はいた。しかし、高性能なドローンやモバイルレーザーは安いものでも一式500万円。補助金で購入したとしても、

循環する林業に必要なもの

なぜ再造林をしないのか?木材の価格が安すぎてコストが賄えない、というのが通説で、私自身も一般の方にはそう説明してきた。しかし実際には、各種の補助金を使えば再造林費用の9割は助成される。残りの1割を山主さんが出し渋るというのは確かにあり、100%再造林を行っている佐伯広域森林組合でも、その説得に苦

成熟した杉の持つ可能性

時が解決するものは結構多い。学生時代の失恋の痛み、やらかしてしまった大失敗、子供のアレルギーも大人になるとかなり改善するらしい。1990年代、国産材自給率の低下を食い止めようと、2×4材の国産化に取り組む試みがあった。しかし当時の杉はまだ若くて細い間伐材、北米のSPF(スプルース・パイン・ファー

モバイル建築の高い完成度

高機能な住める動産、モバイル建築をこの目で見て来た。茨城県境町にある「モバイル建築さかい研究開発センター」(https://mobakyo.or.jp/)の敷地には、ある企業がふるさと納税を活用して建て、町に寄贈した複数の建物が並んでいる。モバイル建築を構成するユニットは、一つなら事務所や単身者

製作過程の緻密さが見える家

「自分のやったことが目に見える仕事、それが一番いい」ある男性が、北千葉にある大型パネル工場を見学した帰りにそう呟いた。ちょうどその日はモデルハウスのお披露目会で、紀州材の柔らかな木目がシンプルな家具と調和した、ため息の出るほど美しい家を見た後で、私たちはその躯体を製造した工場を訪ねたのだ。いつも

動かせる家の利点

自治体ガチャ、という言葉はまだ聞かないが、もしかしたらそのうち流行るかもしれない。住んでいる自治体が、人口減少で行政サービスが滞るような事態に陥るリスクだ。総務省が以前発表した統計でも、将来的に自治体の半分近くは消滅する。賃貸なら転居すればいいが、家を買ってしまったらどうしようもない。広い敷地や自然

サンゴ礁を作った森

広大なサンゴ礁を作ったのは太古の森。そんな心惹かれる学説を知った。オーストラリアの東海岸に2千キロにわたって続くグレートバリアリーフ。世界最大のサンゴ礁で、太平洋の荒波から海岸を守ってくれていることから、大きなバリアという名がついている。 美しく海洋生物の宝庫である貴重な

気候変動と樹木

21世紀は水の時代と言った人がいた。水が様々な場所・局面で大きな鍵を握るという意味だ。地球温暖化の影響は、まず水のふるまいの変化に現れる。ハリケーンやサイクロン・台風が大型化し、集中豪雨は「数十年に一度の大雨」という表現が適切なのかと疑いたくなるほど頻発する。それらの被害は深刻で、今まさに水害の危険

宝物の家

木造住宅の価値とはどういうものだろう?自分がもし施主だったら、美しい木目を眺め、木の香りに癒されたい。動線を考え抜いた使いやすい間取り、暑さ寒さに悩まされない高断熱、椅子にかけた時に目に入る全てが調和して心地よく、人を招けば共に楽しみ、外から帰るたびに安心感と喜びに包まれる。そんな家が自分の経済力の

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