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森と一体になる日

「対象との距離感が大事。」「海に入る時はいつも、お邪魔しますと心の中で呟いている。」50年以上ものキャリアを持つ水中写真家の中村征夫氏の言葉だ。驚いたのは、中村氏が沖縄の美しいサンゴ礁と共に、東京湾での撮影を長く続けていることだった。工業地帯が続く袖ヶ浦市の岸壁のすぐそば、ほとんど視界の効かない

中古住宅の未来

パワーショベルやクレーンなど中古の建設用重機が海を渡っていく。新品を買えば数千万円する機械が数百万円で買えるので、修理して海外に移送すれば十分利益が見込めるらしい。オークションには東南アジアだけでなく、アメリカやオーストラリアなどからも多数のバイヤーが集まるそうだ。日本の中古車も海外で人気があるし、

林業政策を変えるには

林業について、当事者に詳しく話を聞き、具体的な事例を書くようになってから、厳しくもありがたいご意見を頂くことが増えた。書籍にも書いたとおり、森林や林業に関心を持って全国を歩いた16年間、私は物見遊山の客に過ぎなかったと改めて思う。観光地を巡るように、紹介された事業者さんの話を聞いて、それを鵜吞みにし

森林組合の新しい姿

「森林組合が地域の森を守る。」ごく当たり前のことと思うかもしれないが、私が森林・林業にのめり込んだ16年前、「森林組合はどこもやる気がなくてダメ」という話をどれほど聞いただろう。「補助金がもらえる範囲で同じ仕事をするだけ。」「上層部が旧態依然で新しいことをやろうとしても潰される。」「やる気を持って入

伐採跡地でかぶを栽培

皆伐跡地を焼き畑にしてカブを栽培する、そんなユニークな取り組みを知り、詳しく話を伺った。山形県鶴岡市の温海町(あつみまち)森林組合。事務職から山仕事・製材・運輸を含め30人で、年間約20,000㎥の木材を生産し、うち8,000㎥を自前の製材所で加工している。特徴的なのは、皆伐跡地に火を入れて焼き

木材とプラスチック

マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題になり、脱プラスチックが叫ばれるようになった時、私はこれで木材が生き残れると感じた。街には、別の素材の表面に木目調のプリントを貼ったエセ木材があふれている。高級とまではいかないが本物感を売りにした飲食店でも、内装のほとんどが木目のプラスチック、というのはよ

正しい問いなのかを疑うこと

森を守るためのコストをなぜ消費者が負担しなくてはならないのか?この問いを発したのは、建築・不動産業界のコミュニケーションギャップを解消し、幸せな暮らしを実現することを謳う会社の代表である。逆に言えば、しっかりした理由があり、それを自分が納得できたならば、施主をも説得してみせるという自信に裏打ちされた

外にいるから見えるものを探して

明治中期、松江の朝の町には、米を突く音が響いた。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)はそれを、「日本で最もあわれな音、日本という国の脈拍だ。」と表現した。あわれという言葉は、最近では「非常に可哀想で強い同情を感じる」という意味に使われることが多い。けれど八雲が言いたかったのは、「もののあわれ」の感情

森林を最上位に置く産業の実現

「機械はむしろ遊ばせています」先日話を聞いた山形県のある森林組合のK氏の言葉に、一瞬耳を疑った。高性能林業機械は一台数千万円もする。できるだけ稼働率を高めようと考えるのが普通だと思っていたからだ。K氏は続けてこう言った。「機械は置いておくだけなら傷みません。人がシームレスに動くために、むしろ機械は余

「自分の仕事は自然をちょっと手助けすること」朝から印象深い言葉を聞いた。石川県から委託を受けて、白山の登山道を整備している男性の話だ。丈の高い草や笹が茂る登山道を何とかしたいと、最初の2~3年はひたすら草を刈っていた。白山の道は自分が守る、と気負っていたが、そのうちある事に気

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