文月ブログ

地域の材で高性能な家を

「家のつくりやうは夏を旨(むね)とすべし」とは徒然草の一節だ。火を焚けば暖を取れるが、暑いのを冷やす術はうちわや打ち水くらいしかなかったから、何よりも風通しを優先し、大きな開口部を作ったのだろう。しかし今や、夏の高温は風通しの良さで凌げるレベルではなくなった。冬の寒さも、居室だけを温めるこれまでの方法では、風呂場などで倒れるリスクが高いと指摘されている。冷暖房を支えるエネルギーの多くを輸入に頼っていることもあり、最近は光熱費が安く抑えられる高気密・高断熱の家が推奨されるようになった。家中ほぼ同じ室温が保たれるので、快適で健康にも良いそうだ。
 そんな家が、身近な地域の木材でできていたらどうだろう。柱や梁が樹木として立っていた場所を訪れ、小さな苗木が育っていく様子を見守れたら、どんなに嬉しく誇らしいだろう。昔から、大抵の家はその土地の木で建てられてきた。後の世代のために、伐り尽くさず、あるいは植えて育てる行為の襷(たすき)はずっと繋がれてきた。循環し再生できる資源、それを実感できる家に暮らせる仕組みを作れたら、襷の担い手はきっと増えていくに違いない。

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