文月ブログ

森と生きるために-業界の新陳代謝①

私は今年の4月、新しく設立された会社で働き始めると同時に、本名ではなくペンネームで活動することを決めました。それまで自分の歩んで来た道が、当初の志とは違う、本筋ではない方向へ迷い込んでいたことに気づき、その原因となった自分の甘えに決別したかったからです。これまでご縁のあった多くの人とのつながりを失う恐れもありますが、これからの自分に本当に必要な人は誰なのか、改めて考え、関係を構築しなおすことを選びました。
その再構築の一つが、4月から書き溜めたブログを毎日SNSに転載しながら行う、友達申請という作業です。SNSでは、共通の友人が多い人をAIが自動的に紹介してくるので、この機能を利用して、転載したブログの内容に応じて申請を送っています。
そんな中で気づくのは、以前、熱心に林業や木材に関わっていた人が、元いた職場を離れ、場合によっては全く別の業界に転職していることです。普通の業界なら、例えばアパレルにいた人が派遣業界に転職したり、メーカーで働いていた人が飲食業界に入ったり、というケースは珍しくもなく、特に話題にするほどのことは無いでしょう。けれど、林業・木材業界にいた人の転職には、それとは少し違う心象風景を感じてしまうのです。
元々この業界は、行政や一部の大企業を除き、給与などの待遇は決して良くありません。むしろ中小零細企業が多く、労働環境も恵まれているとは言い難いのが実情です。高学歴で、他の業界に行くこともできた人は特に、それをわかった上で、森が好きだから、日本の林業を立て直したいから、少しでも国産材に関わる仕事がしたいから、そんな理由で入ってきたのだと思います。林業関連のセミナーやイベントは数少なく、多くの場所でそのような人と顔を合わせる度に、業界の狭さを苦笑し合っていたものです。それだけ、まじめで勉強熱心で、本気で何かをしたいと考えている人はある意味限られていたのかもしれません。
最近、林野庁で重要な役職を務めた知人が退官しました。詳しい事情はわかりませんが、伝え聞くところでは、若い頃から長年続いた業務の厳しさと、それにも拘わらず明るい未来を描きにくい閉塞感とが、その人の生命力をすり減らしていたようです。今回の友達申請で、久しぶりに昔の知人の消息を調べると、今は業界から距離を置いているとか、全く畑違いのメーカーに移っているとか、そんなケースにいくつも行き当たりました。そもそも、大学で林学を学んだ人の多くが、行政職以外ではその道に進むことを諦め、金融機関や一般企業、場合によっては海外に就職先を求めることが多いのを見聞きしています。
なぜ林業や木材業が、優秀で熱意を持った人材を生かせないのか、一旦は挑戦しても、諦めて他産業に移る人を生み続けるのか、その理由は、新陳代謝の無い、硬直した組織ばかりだからではないでしょうか。恐らく日本の森林と同じく、適切な更新がされず、ダイナミズムを失っているのでしょう。
日本の林業は基本的にプロダクトアウトで、山から消費者まで、木材は数多くの事業者の手を経て流通します。その中のどこか一社が近代化をしようとしても、前後の会社の水準に合わせるしかなく、手書き・FAXの業務が未だに続いています。廃業する企業が多く、新規参入は少ないのに、関係団体の数は隆盛を誇った当時のままです。サプライチェーンの長さと複雑さ、関係者の高齢化が、業務の近代化、ひいては組織や人の新陳代謝を阻んできたと言っても良いでしょう。
明日に続きます。

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