文月ブログ

小さくても地域の山を守る会社へ

小さな会社でも、素材生産だけでなく造林や苗木生産も自前でできる、そんな心強い事例に出会った。宮崎県のある会社では、常用雇用9人で毎年15haの主伐と10haの再造林、3~4haの間伐で8,000㎥を超える原木を生産している。昨年は一部を下請けに出しながら36haの下刈りを行い、パート従業員の手を借りて原木しいたけを栽培、3万本のコンテナ苗を生産したという。
この会社の創業者は、元は炭焼きをしていたが、昭和の拡大造林期に会社を興した。その子である現社長は素材生産の機械化を推進、若い三代目は苗木生産やICTの活用にも取り組んでいる。彼は10年近く前に京都府立の林業大学校で学んだが、その時は同じ林業でもやり方がこれほど違うのかと驚いたそうだ。具体的には事業の規模やそのスピード感で、主伐再造林が主体の地元と、沢山植えて何度も間伐を繰り返す京都での、仕事のやり方・考え方の違いを鮮明に感じたという。ある意味、真逆の林業に深く接したのは良い経験だったと話していた。
そんな彼に、宮崎で問題になっている誤伐・盗伐について聞いてみた。あれはまず境界が明確になっていないこと、そしてそれに付け込んだ一部の悪い業者が大した罪に問われないので、周りもそれに合わせてしまったのだろうと言う。最近は県や市町村も敏感になり、伐採範囲の確認に所有者が立ち会う写真や、周囲の山主が承諾したという印鑑が必要など、手続きが煩雑になっているそうだ。人の財産なのだから間違いがあってはいけないと、真面目にやってきた人々からすればさぞ腹立たしいことだろう。
もう一つ、この会社に未来を感じたのは、最近、立木だけでなく土地ごと売りたいという声を受け、山を買い増していることだ。今は300㏊程度だが、立地や木の育ち具合、つまり経済林としての価値を見極めつつ、今後も増やしていくと言う。「地域の山を守るには、自分達のような会社が買わないと」そんな声を頼もしく聞いた。
効率のみを追うのではなく、苗木を育てて山に植え、保育し、山に学びながら管理していく、その循環に意義を見出す彼のような若者が、もっと増えて欲しいと思う。

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