文月ブログ

林業とネイチャーポジティブの両立

日本ではネイチャーポジティブと林業振興は両立する。むしろネイチャーポジティブに林業は欠かせないと言ってもいい。
何を唐突にと思うかもしれないが、早いうちにそれをしっかり主張しないと、割り箸が環境破壊の象徴のように扱われた過去の轍を踏むことになる。今の日本で起きていることと、諸外国で進む開発による生物多様性の損失は全く逆なのに、多くの人がそれを知らないからだ。
先日、北海道で数十頭の牛を殺したクマのOSO(オソ)18が駆除されたが、それを伝えたニュースの後に、コメンテーターは「人間の開発がクマをそのようにさせたとしたら反省すべき」といった趣旨の発言をした。広義においてはそのとおりだが、開発によって野生動物が棲家を失い、数を減らしている海外の事例が頭にあるような印象を受けた。
実際には、日本の野生動物は爆発的に増えている。特にニホンジカやイノシシは天敵がおらず、温暖化で冬を越すことが容易になったため、各地で農林業に重大な被害をもたらしている。環境省の資料では、令和4年度にシカ720,000頭、イノシシ590,000頭が駆除されているが、焼け石に水というのが実態だ。シカは林床の草や苗木を食べ尽くし、多くの植物を絶滅の危機に追いやっている。特定の植物と共生する昆虫も同様だ。植物の種類が減ると咲く花の間隔が空いてしまい、寿命の短いミツバチは巣を維持できなくなる。ある種の生き物だけが大繁栄すれば、生態系のバランスは崩れる。オオカミを絶滅させた日本人はシカの頭数管理に責任があるのに、それに失敗してきたと言ってもいいかもしれない。
日本では、人が自然に関わらなくなったことが生物多様性を失わせている。地域に人が住み、耕作放棄地を少しでも蘇らせ、山で働く人を増やす、そのための経済基盤として、林業は大きな可能性を持っている。明日はもう少し詳しくお伝えしたい。

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