「僕らは今日ただ一羽の夢見がちな烏になって 光を受けて続くこの道を辿り直していく」NHKのサッカーテーマ、米津玄師の「烏」の一節だ。もともとそこまで熱心なファンではないが、この曲、特に巨大な造船所を舞台にしたミュージックビデオに魅了され、数十回も繰り返し視聴している。この曲の一体何が、私をこれほど惹きつけるのだろう。
一曲を通して聞いてみようと思ったのは、彼がNHKの番組で、「自分でも意外なほど『個人的』な曲が出来上がった」という主旨の話をしていたからだ。日本でサッカーと言えば長く団結とか組織力が重要視され、強豪国選手の持つ「個の力」にそれで対抗するという意味合いで使われてきた。しかし今、私達が目にする日本代表は、若い時から欧米に渡り、レベルの高い環境で揉まれ、個の力を磨き上げた偉丈夫の集団だ。そこにスピードや連携の巧みさ、戦術が絡み合い、目を見張るようなゴールを見せてくれる。Jリーグ発足から35年、日本経済が停滞していた時期に、よくぞ成長し続けてくれたと思う。
八咫烏は、神武天皇の東征において、太陽を背にして攻め入ろうと軍勢が熊野から大和に向かった際に道案内をしたとされる。三本足になったのは、中国・朝鮮由来の太陽の化身「三足烏」と同一視され融合していった結果らしい。その後、天武天皇が蹴球の上達を願って熊野大社に通った事などから、日本サッカー協会のシンボルマークに採用された。カラスを好きな人はあまりいないかもしれないが、その賢さと生命力の強さは誰しも認めるところで、神話の時代から人間との関わりが深い鳥だったのだろう。
そして私はビデオの舞台に造船所を選んだ制作者に拍手を送りたい。複雑な形の巨大な鉄の板が幾重にも溶接され、日本の貿易と物流を支える造船業は、建造費の安い韓国・中国にシェアを大きく奪われた。しかし最近、その戦略的な価値が見直され、国を挙げて復活を目指す、技術と組織力の塊だ。並んだコンテナに詰め込まれた様々な品(中には木材も!)や生き生きと踊る子供達の姿は、過去から未来に続く絵巻物のような不思議と晴れやかさに満ちている。
熊野本宮大社の主祭神スサノオノミコトは、自分の髭からスギを生み、これで船を作れと命じたと伝わる。海洋国家日本の歴史は長くスギと共にあったが、それが鉄や強化プラスチックに変わった後、戦時中の過剰伐採、戦後の供給不足、木材価格の下落など、スギと日本人の暮らしがうまく噛み合わない時代が続いた。それが最近ようやくAIの進展によって、人工林の蓄積を宝として活かせる機会が巡って来た。他業界で揉まれ、先入観が無く、柔軟で強靭な頭と精神を持った若い林業経営者、夢見る烏が現れ始めたと思う。
スマート林業、設計図書と森林資源をつなぐ技術、それらが整ってきた今、最後のピースは自ら羽ばたこうとする実行者だ。その瞳に映る世界を想像しながら、飛行の軌跡を追い続けようと思う。
文月ブログ
コメント