文月ブログ

C4植物と闘う苗木達

タンザニアのセレンゲティ国立公園は、四国ほどの面積にライオンやヒョウなど4.000頭を超える大型肉食獣が高密度で生息している。それはヌーやガゼルなどの草食動物が300万頭もいるからだ。動物達の命を支えているのは、イネ科など成長の早いC4植物だ。光合成で作られる初期生成物が炭素3つでできているのがC3植物、C4植物は炭素4つの物質を作ることからそう呼ばれる。
実は二酸化炭素は1000万年前に最も濃度が低くかったらしい。寒冷化で二酸化炭素が海に溶け込み、地上のほとんどの植物にとって十分でない状態になった。その頃、体内で二酸化炭素を濃縮し、効率的に栄養素を作り出せるC4植物が生まれ、次第に繁栄するようになった。葉緑素も濃く、最大光合成速度はC3植物の約2倍にもなる。安定した強い太陽光・高温・水があれば成長が早く、乾燥にも強い。日本には約400種あり、サトウキビ・トウモロコシなどの他、ネコジャラシ(エノコログサ)やメヒシバ、ススキもそうだ。夏の雑草の茂り方は尋常でないスピードだと思っていたら、高機能に進化した光合成能力を持っていた。
高緯度で雨も比較的少ない欧州と違い、日本の山に植えられた苗木はこの強力なC4植物と闘わなくてはならない。だから過酷な夏の下刈りは必須で、再造林が中々進まない要因の一つにもなっている。雑草に負けない成長スピードの苗木、下刈りロボットの開発など、様々な取り組みが進んでいくだろう。
アフリカの大地で、野生動物に地際まで食べられても再生する、そんな旺盛な生命力を持つ草も、四季の移ろいには逆らえない。実をつけて枯れ始めたネコジャラシの茶色い穂は、まだ暑いと汗をかく私達より遥かに敏感に、秋の訪れを感じているのだろう。

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