文月ブログ

木の使われ方で変わる山側の利益

最近、カーボンニュートラルやSDGsをキーワードに、産業界が都市の木造化を進めている。良い事には違いないが、どんな木を使うのか、その調達が山側にどんな影響を及ぼすかというところまで突き詰めて検討されているのか、そこは良くわからない。一方、もう少し丁寧に林業の実情を知った上で建築を考えようという、山に歩み寄ってくれる建築関係者が増えているのはとても嬉しいことだ。簡単ではないが、少しずつ双方の知識のギャップが埋まっていけばと思う。
先日、新築の木造マンションについてレポートしたが、コメントで「国産材比率約50%」を評価する声を頂いた。それは間違いのない事実だが、一方で、柱や梁は全て輸入で、使われていた国産材は合板のみであること、山側から見たその意味が理解されていないのかもしれないと感じた。
山から木を伐ってきて、最も高く売れるのは、製材して乾燥し、仕上げをしてそのまま建築に使われる製材品向けの原木だ。少し曲がっているとか、太くなり過ぎた丸太は、合板用になる事が多い。薄く桂剥きをして貼り合わせるので、欠点を埋め合わせできる。あるいはラミナという薄板に挽いて、集成材の材料にすることもある。それ例外の、虫食いや曲がりの大きな材は、チップになったりバイオマス燃料として燃やされたりする。
製材品になる原木に比べ、その価格は次第に下がり、バイオマス用では約半分になってしまう。合板しか使われないというのは、製材品がまだこの市場に食い込めておらず、山に還るお金が少ないこと、しかし同時に、この先大きな伸びしろがあるということでもある。
林業経営者は、原木をいかに高く売るかに苦心している。2×4の場合、在来木造に向かない大径材を、構造用として活かせる可能性もある。この新たな市場を取り込めるかどうかは、山側と建築事業者の歩み寄り、そしてお互いが切磋琢磨して信頼を築けるかどうか、そこにかかっているように思う。

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