文月ブログ

意外と知らない「杉」のこと

杉は北海道の一部を含め、本州以南に広く自生、あるいは植えられた日本固有の針葉樹です。多くの品種がありますが、九州以外では「杉」と一括りで語られることがほとんどです。戦後の拡大造林期に一斉に植えられたため、どこにでもあるありふれた木ですが、地域や場所によって、育ち方が全く違うことは意外と知られていないようです。
有名な秋田杉など、日本海側の寒冷地では、成長が遅く目が詰まっているので、60年以上、条件によっては80年経った杉が、強度が高く木目の美しい建材として取引されています。
一方、九州では成長が非常に早く、50年程度で直径30センチを超え、中には更に太くなる個体もあります。そういう土地だからか、昔から品種も多様で、様々な試行錯誤の末に、その土地に合い、将来高く売れそうな性質を持った種類の苗を選んで植えるという話を聞きます。早く真っすぐ育ち、色合いが良く、花粉が少ないといったものです。
間伐が良くて皆伐はダメ、といったイメージを持っている方がいるかもしれませんが、九州のような成長の早さでは、ある程度の時期に皆伐をしないと、残された木が太くなり過ぎて、伐り出す労力の割に高く売れないという問題が起こります。ハーベスタなどの高性能林業機械を使った大量伐採の林業は九州から始まったと言って良いと思いますが、それはこのような事情で、杉の資源量が膨大だからでしょう。
日本海側の林業地でも、間伐を繰り返してずっと置いておくことができるかと言うと、やはり80年以上の木では腐ったり虫が入ったりと問題が増えていくようです。もちろん、百年・二百年と育っていく杉もありますが、全ての場所で可能な訳ではありません。
同じ地域内でも土壌や斜面の向き、風の当たり方、人の手入れの度合いなど、様々な要素が絡み合い、多様な素材が生み出されていく林業。長い時間の末にようやくその実相に迫れるようになった自分への反省を込めて、知ってもらえればと思います。

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