文月ブログ

森を巡る旅-木材コーディネイト基礎講座②

2019年の12月、国材コーディネイト基礎講座の二回目の演習が、前回と同じ飯能で行われました。ほぼ一日、製材所や屋外で過ごすので、防寒対策を厳重にするよう注意がありました。私はもともと寒がりなので、言われずとも人より多く着込んでいくのですが、この時はそれでも足りず、使い捨てカイロをもらって背中に貼ったうえ、待ち時間はじっとしていられずに、敷地内をピョンピョン飛び跳ねて体を温めました。
受講生は幾つかの班に分かれ、秋に切り倒した丸太をくじ引きで割り当てられて、そこからどうやって木取りをするかを競い合いました。梁や柱だけでなく、間柱、胴縁、垂木など、1㎥あたりの標準単価表があり、製材の鋸の厚みも考慮しながら木取りを検討します。木の内部は見えませんが、プロは木口の様子や表皮に残された枝打ち痕から、どこに節が出るかを推定して製材します。講師のN氏は、毎日数百本の製材を数年続けて、やっとわかるようになると言っており、私達のレベルでは運に任せるしかありません。それでも、仲間と協議しながら、時間をかけて木取り図を木口に書き入れました。
次は、近くの製材所に丸太を運んで、意図したとおりに製材をしてもらいます。実際にこんな経験ができることは滅多にないので、私達も興味津々で、鋸の動きと現れる断面を見守りました。最後は、製材された製品を格付けし、実際に売るとしたらいくらになるのかを計算します。節の大きさや数により、一等・二等と区別してそれぞれの単価を出していきます。細い部材になると、死に節があればそこまでの長さしか使えません。それが3メートルあるかないかで、金額は全く違ってきます。そんなふうに、実際の販売額を計算していき、最も高く売れる木取りをしたチームが優勝しました。
この製材演習でわかったことは、どんなに手間をかけて製材しても、直径30㎝前後の木材の歩留まりは良くて6割、普通は5割程度だということです。丸いものを四角にするだけで、また鋸目を入れるほど、使える部分は少なくなってしまうことを実感しました。昔の大工さん達は、背板と呼ばれる半円形の部分も生かし、7割を使っていたと聞きますから、それはすごい技術だと改めて思います。百聞は一見に如かず。実際に体を動かし、頭を使い、自分の目で見た経験は、記憶に深く刻まれました。
木材コーディネイト基礎講座は、この演習後の最後の座学で、各自がそれまで検討してきたビジネスプランを発表して終了しました。中には、後日それを見事に実践した人もいます。私は認定試験を受験して、無事に准木材コーディネイターの資格を得ることができました。この講座で学んだことは、山側と建築のそれぞれの言葉を翻訳する、インタープリテーションのようなものです。木材には製材と乾燥が必要で、その手間と時間をどうやって発注する建築側に伝えるのか、そのための知識を学ぶ機会だったと思います。電話一本で翌日届く普通の建材に比べ、木材、特に国産材を使う場合にはなぜ事前の準備や配慮が必要なのか、その理解を建築サイドに広げていくことが、国産材の利用促進になるというものです。
一方で、そもそもコーディネイターが必要な状態を無くすべきだという主張もあります。国産材でも、大手の集成材メーカーは発注から数日以内にどこへでも届けられる物流体制を築いています。また、需要情報をもとに、山での伐採・造材までつながる短いサプライチェーンを作れば、木材コーディネイターというコスト要因は不要になるはずです。
とは言え恐らく当面は、やはり山と建築の橋渡し役が必要な状況が続くでしょう。ことに住宅以外の大型物件はその可能性が高いと思われます。しかし国残材の利用が遥かに拡大し、その品質や流通方式が進化していけば、いつか状況は変わっていくでしょう。その日を目指して、今日も溝を埋めるための発信を続けていきます。

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