文月ブログ

森を巡る旅-国産材ビジネスセミナーその1「参加者二人からのスタート」

林業塾でお会いした牧さんの紹介で、2010年にある方が始めた「国産材ビジネスセミナー」という講座に通い始めました。それまで、国産材は儲からないとか、地域特性が強くて閉鎖的、衰退産業といった話を聞いていたので、はっきりと「国産材+ビジネス」を打ち出した講座は新鮮で、早速受講の申し込みをしたのです。
講座開設のお披露目を兼ねた初回の無料セミナーには数十人が来ていましたが、有料で始まった本講座の参加者は、私ともう一人の二名だけでした。もともと、主催者は大阪で林業・木材業者向けに実践的な経営セミナーを行っていて、もう一人の方は滋賀県から参加されていたので、私が申し込みをしなければ、滋賀県の方には大阪のセミナーを案内し、東京での開催を断念するところだったそうです。
私は林学を学んだ訳でも、身内が材木屋でもなく、実家が山主でもありません。何のためにわざわざお金を出して学びたいのかと問われると、すぐに納得してもらえる答えを言うことは難しいのです。しかし、日本の森林や林業を再生させるには、しっかりしたビジネスの考え方やアプローチが必要だという直感があり、それは間違っていなかったと今でも思います。
主催者は大学在学中から奈良県の林業地に通い、そこで林業や木材について学んだ後、大手のシンクタンクに在籍してコンサルティングの力を磨き、この業界を専門に活躍しようとしていました。大阪で林業・木材関連の経営者を集めた研究会を実施し、そのうち何社かの業績向上という実績も上げていたようです。彼の主張は極めてシンプルで、「当たり前のことをちゃんとやれ」ということでした。曰く、林業・木材業の経営者は他の産業で当たり前に行われていること、具体的には、自社で扱う商品の品質基準を定める、見積もり依頼に素早く回答する、納期を守るといったことをしていない、というのです。自社の位置づけや強み、ターゲットを見極めた上で、それらをきちんとやり切れば、売り上げは付いてくる、と言っていました。しかし、林業・木材事業者は西日本に多いこともあり、東京ではセミナーの対象者をもっと広く想定していたと思います。
初回は二人だけでスタートした講座でしたが、二回目は三人、その次は五人と、参加者は着実に増えていきました。私のように、直接の利害がなくても関心を持つ人、林業・木材産業従事者、学生、行政、次のビジネスを検討する他産業の精鋭など、東京の参加者は様々でした。カリキュラムも、当初はSWOT分析など経営手法の解説が中心でしたが、次第に林業・木材・住宅産業をもカバーした、最新のニュースや注目すべき動向の紹介・分析へと広がりました。勢いのある当事者を講師として招くことも増え、いつもワクワクする楽しみと新たな学び、そして志の近い仲間との時間を得られる、貴重なセミナーになっていったのです。最盛期には、半日で一万円を超える受講料ながら、二十人以上の参加者を集めていたと記憶しています。
そんな国産材ビジネスセミナーで感じた事を、次回以降もお話してみようと思います。

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