文月ブログ

森と生きるために-森林列島再生論

9月上旬に、ずっと準備を進めて来た本が日経BPから出版されます。ECサイト上の予約受付も近く始まる予定で、書籍のタイトルは「森林列島再生論」。昨年の秋にウッドステーションの塩地会長が構想し、当初は筆者というより専門家と読者の橋渡しをする「森林添乗員」としての役割を打診され、最終的には自分の目線で一章を書くことを任された、自分にとって登竜門とすべき本です。
章立てと著者は以下のとおりです。

第1章 森林列島再生論序説
塩地博文(ウッドステーション 代表取締役会長)
第2章 森林と建築をつなぐ
高口洋人(早稲田大学 理工学術員/建築学科・建築学専攻 教授)
第3章 木材と建築生産、情報システムをつなぐ
塩地博文(ウッドステーション 代表取締役会長)
第4章 森林と金融をつなぐ
松本晃 (日本政策投資銀行 経営企画部所属参事役)
第5章 森林とエネルギーをつなぐ
酒井秀夫 (東京大学 名誉教授、日本木質バイオマスエネルギー協会 会長)
第6章 森林とサプライチェーンをつなぐ
寺岡行雄 (鹿児島大学 農学系教授)
第7章 森林列島を巡る旅を終えて
文月恵理 (森林連結経営 副社長)

塩地会長による帯文にはこう記載されています。
日本は森林面積が国土の3分の2に及ぶ森林大国。だが、これまで木材を輸入に頼ってきたため、国内林業は衰退し、木材産業や建築業、不動産業とつなぐサプライチェーン(供給網)も分断されてしまった。そうしたなか、国際的な木材の供給不安が発生、木材価格が暴騰する「ウッドショック」と呼ばれる事態を引き起こしている。直近ではウクライナ危機を受け、さらに先が見通せなくなっている。森林大国の日本にとって、豊富な資源を生かさない手はない。本書は、森林という資源の現状とその未来を問うものである。「森林列島」を再生するために、林業や林産業ではなく森林産業を構想し、国土を有効活用する事業案を起草する。

著者の顔ぶれを見てすぐ、何の実績も無い私に、場違いな感じを抱かれる方も多いでしょう。当初は私自身が、そのような気後れを感じていたことも事実です。しかし、これまでの日本の林業の歩み、各地の現状を15年にわたり見て来た経験を自分の言葉でまとめてみると、むしろ専門家だけでは解決できない、だからこそ私が必要だったのだという思いを強くしました。専門家は、特定の領域の範囲内で研究をし、知識を深めたり、地道な調査や実験で仮説を証明したりします。専門性を深めるほどその範囲は狭くなり、他の領域に踏み込んでいくことには慎重にならざるを得ません。この書で示されているような、林業・建築・バイオマス・金融・ITといった諸分野を統合する試みは、研究者でなく実践者、つまり事業家でなくては難しく、事業家の目線は消費者・生活者の意識や行動に向かいます。長く日本の林業・木材業を見てきて、しかしそこに染まらず生活者の視点を持ち続けた自分こそ、事業家の人々を動かせる、今はそう確信しています。
チェックはしていても、細かい部分では誤謬もあるかもしれません。しかし、大きなストーリーは決して間違っていないと、自信を持ってお勧めできる本です。

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