文月ブログ

森を巡る旅-特殊伐採との出会い

岐阜のNPOが主催したイベントの二年目だったと思いますが、特殊伐採を請け負うチームの方が招かれ、その実演を見たことがあります。特殊伐採は、ロープやカラビナなどの登山用具を使い、高い木の上で作業して、簡単には伐ることが難しい支障木などを安全に撤去する仕事です。住宅地の枯れかけた古木や、お寺の屋根に落ちてきそうな太い枝など、普通は高所作業車を横づけして対処しますが、場所や条件によってそれができない場合に、彼らが活躍するのです。
高い木に登り、自分の頭上の梢の部分にロープを結んで、少しずつ切って下に降ろしていったり、重い枝にはロープを張り巡らし、切った後は滑車を使って静かに地面に横たえたり、場面によって最も安全で効率的な方法を考えて実行します。このような伐採技術は欧米で発展し、技術を競う大会なども行われているようで、彼らも海外で技術を身に着け、日本に広めようとしていたのでした。林業で伐採班に所属しているだけでは、普通は高い給与は望めず、キャリアアップの道も限られます。このような技術を身に着ければ、エキスパートとして活躍できるかもしれないと、見学者達の目も真剣でした。
私がとても印象深かったのは、安全に関する彼らの徹底した拘りです。木は私達一般人が想像するより遥かに重く、しかも、古木の場合はどこが傷んでいるかわかりません。予測しない場所や方法で落下すれば、重大な損害が発生しかねないのです。ですから、起こり得るあらゆるリスクを想定し、万一それが二つ重なっても重大な結果を招かないように、力学や機械工学の素養を駆使して計画を立てます。使用するロープも、かかった重量とその時間を記録し、メーカーの保証する耐用年数より遥かに短い期間で交換しているとのことでした。
特殊伐採の技術を応用し、ツリークライミングというレクリエーションも愛好家の間に広がっています。後日、その講習にも参加して安全管理の重要性を繰り返し聞いた私ですが、木に身を寄せる遊びの世界に比べ、当然ながら、木を相手にしてそれをねじ伏せる特殊伐採チームの自己管理はけた違いの厳しさでした。
もう一つ、彼らの姿勢で心に残っているのは、作業の範囲と対価を明確にし、それ以外の仕事は引き受けないということです。造園業の方などに良く聞いた話ですが、畑の日照を遮る木を伐ってくれと依頼されて作業が終わると、ついでに庭の木も頼むと言われ、断れずに伐ることがあるそうです。詳しい作業内容を書面等で交わすことが少ない、業界の慣習によるものでしょうが、それは結局自らの作業単価を下げ、軽く見られることにつながります。だから彼らは、契約以外の仕事は頼まれてもやらないと決め、実行していました。
特殊伐採は、理系の頭脳と経験、高い身体能力やチームワークが必要な技術です。下準備にも時間をかけ、決して事故を起こさないという強い覚悟で臨んでいた彼らが、とても眩しく見えました。

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