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この木どこの木?

これは昔、木材トレーサビリティの重要性を多くの人に知ってもらうためのキャンペーン用に考えた稚拙なキャッチコピーだ。大手家電メーカーのCMで流れるフレーズの認知度を利用して、「何の」じゃなくて「どこの」なのは何故?という疑問から説明の糸口を掴めないかと思ったのだ。ほとんど成果を出せなかったが、久しぶり

九州電力の百年の森

九州電力が湯布院に所有するFSCの認証林を見学させて頂いた。その森を管理する九州林産の社員の方々に案内して頂き、初夏の涼やかな緑と多くの鳥の囀りが響き合う散策路を歩いた。森を歩くのはいつも気持ちの良いものだけれど、こんなに心が浮き立つのは何故なのか。恐らくその森が、持続可能な森林経営をしようとする人

住宅建築に潜むもの

ある人から怖い話を聞いた。豪華な宮殿も、荘厳な寺院も、基本的に建築は全て「人」を支配するための装置だという。自分の権威を示し、人々が己にひれ伏すよう仕向けるための道具だと。言われてみれば確かにそのとおりで、貴重な遺産だと称える行為は、建築を指示した人間に未だに支配されているということでもある。更

相応しい対価を払うために

夏を前に自宅のエアコンが寿命を迎えた。近くの家電量販店を回って購入する製品を決め、この時期なので数日後には取り換え工事に来てもらえることになった。朝から小雨の降る日、到着予定時刻の確認電話の中で、工事担当者が取り付け場所を3階だと認識していないことを知った。私は店舗の担当者に戸建ての3階でエレベータ

森の時間

科学の進歩は私達に、宇宙の始まりが約138億年前だとか、ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界中に広がり始めたのが約6万年前だとかを教えてくれた。その一方、ハイスピードカメラの普及によって、一瞬の出来事が引き延ばされることも起きた。水面に水滴が落ちた瞬間、美しい王冠(クラウン)のような造形ができる様子

物質と生命の間で

GWに、ベランダの植え込みやプランターの草取りをした。去年の秋以来、どこからか種が飛んできて根付いた、数十種類の草木を引き抜き、抜けないものは鋏で切ってゴミ袋に詰める作業。楽園を築いていた彼らから見れば、私は世界の破壊者で虐殺者だと思いながら。近年の研究によれば、植物も人の耳に聞こえない音を発したり

地域に遺すべきもの

能登震災被災者ための応急仮設に、木造モバイル住宅が初めて採用されている。立教大学の長坂先生が長年提唱して来られた、十分な耐震性・断熱性を持ち、かつ必要なら移設ができる木造のユニットを組み合わせたものだ。災害時の応急仮設というと、建築現場の仮事務所のような軽量鉄骨の建物か、トレーラーハウスが主流だった

建築と地域材をAIが結ぶ日

先日、ウッドステーション株式会社が発表した概算AIについて、その使い方や計算結果を見せて頂く機会があった。ユーザー画面で施工予定日や地域を入力、防腐など仕様に関する項目を選択し、木材についても主な部位ごとに希望する材を指定した上でPDF図面をアップロードすると、数十秒でAIが画像解析を行い、見積書が

首里城を巡る風

友人の集まりで沖縄に行き、ホテルから歩いて20分の場所にある首里城公園を訪れた。ここに来るのは三度目で、前回は威厳に満ちた正殿の中を歩きながら、吹き抜ける風に何とも言い難い不思議な思いを抱いた。古代の文字や囁きが散りばめられた空気というか、人の思いが溶け込んだ水流に打たれるような感覚とでも言おうか。

木の命への作法

ヨーロッパの石造りの家は何百年も使い続けられている。地盤沈下やファサード(建物正面のデザイン)の重みで壁にヒビが入っても、400年持ったのだからすぐには壊れない、と意に介さず、補修をしながら人は住み続けている。地震や台風の無い国をうらやんでも仕方がないが、日本のように一生に一度の買い物が子孫に遺せる

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