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未来の森林組合

平成2年(1990年)、スギ中丸太の平均価格は現在の倍近い3万円前後だった。バブル崩壊に始まった日本のデフレ時代、丸太価格は長期にわたって下落し、戦後に植えられた人工林がせっかく収穫の時期を迎えたというのに、建築に使われる木材の多くは外材を中心とした商流で固められ、森林組合の多くは補助金をもらって森

森林直販の類型

先端技術を活用して森林資源と建築を直結させ、地域の木造需要を地域材で賄う。産業と言える一定の規模を持ち、地域の経済を潤すと共にその地域の森林が健全に保たれる状況を作る。それが私の考える森林直販だ。今はまだ、これこそ森林直販だと思える事例に出会っていないが、近いところまで来ている例は沢山ある。今回はそ

森林直販の担い手を考える

裏山の木を在庫にし、AIを活用した建築サービスで地域の建築需要を先行受注、予約内容に合わせた効率的な伐採・造材・加工で木材の価値を極限まで高め、近接した工場内で住宅の躯体を構成するパネルにまで組み上げて更に付加価値を付け、工務店やビルダーに供給する、それが私の考える森林直販だ。先週書いた文章へのコメ

森林直販と産直住宅の違い

山側が自ら手掛ける森林直販によって、木材の価値を最大化できる、住宅資金が域内に循環し、地域の経済が潤うと、私は訴え続けている。しかし、その中身が理解されないのは、やはり私の説明が不足しているからなのだろう。特に、各地でいわゆる産直住宅を手掛けてこられた方の中には、自分達はずっとやってきたという思いが

日本人が森を見捨てた30年

最近話題になっている本を読んだ。「世界秩序が変わる時-新自由主義からのゲームチェンジー」筆者の齋藤ジン氏は都市銀行に勤めていて仕事に疑問を持ち、バブル崩壊後にアメリカに渡ってヘッジファンド向けに情報提供する会社の共同経営者となり、大きな経済の転換点を何度も言い当ててファンドオーナーに巨額の富をもたら

デジタル森林情報の活用に関する調査報告

一般社団法人日本森林技術協会の2024年度の助成事業に採択され、林業ICTに関する全体像を知りたいと調査した内容をまとめた報告が、「森林技術」の8月号に掲載されました。SNS当への転載が可能になりましたので、内容を公開いたします。研究者から見れば十分な調査・分析とは到底言えないかもしれませんが、あく

ミツマタの花咲く森

岡山県美作市の右手(うて)地区という場所を訪問する機会があった。ミツマタの産地で、「局納ミツマタ」といい、造幣局に納入していた時期もあったらしい。古くから木地師の里としても知られ、今も伝統を受け継ぐ人が細々と活動している。清流を利用したアマゴやニジマスの養殖場があり、林業遺産に指定された「水車製材」

再造林費用を生み出す

先週、再造林費用を製材品1m3当りで割り返すとどのような結果が出るのか、という試算に関する勉強会があった。再造林とは、一定面積の人工林を全て伐採した後、跡地を地ならしし、地域によってはシカに食べられないよう周囲に高い柵を張り巡らせ、苗木を植えて、5年ほどの間は雑草に負けないよう夏に草刈りを行うな

樹木を巡る命の話

木を伐ることは、命を奪うことなのだろうか?先日、数人の若手仏教僧侶とお話する機会があり、同席したある人がそんな質問を投げかけた。木を伐ることに罪悪感を覚える人は沢山いる。特に百年を超えて太くなった樹木には独特の生命感が宿り、人知の及ばない尊さが備わる。しかし社寺の建立には昔から巨木が使われてきた

命の順送り

今年89歳になる母は、膝を痛めていてゆっくりとしか歩けない。それでもかつて参加していたグラウンドゴルフの仲間から声をかけられ、スナックでのカラオケや温泉旅行によく出かける。町のシニアの集まりでカラオケの講師を10年務め、先日勇退したばかりだ。何人ものお百姓さんからしょっちゅう野菜を頂き、近所にはお惣

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