文月ブログ

森と生きるために-ツーバイフォー(2×4)工法を学ぶ

木材は建築以外にも家具や木工品、紙やバイオマスなど多くの製品に使われます。しかし取引価格が最も大きいのは、住宅・建築に使われる製材品や合板向けの木材です。ですから、山の維持管理に必要な木材価格を実現するためには、出口とか川下と呼ばれる、住宅その他の建築について知ることが欠かせません。
木造と言えば、梁桁や柱を組んで作る木造軸組工法が在来工法と呼ばれ、日本では一般的です。しかし、欧米をはじめ多くの国では、木造と言えばツーバイフォー(2×4)工法が普通なのだそうです。ツーバイフォーが普及する以前は、どこの国にも在来の木造工法があったのですが、規格化された部材の大量生産によるコスト低減、設計・施工のマニュアル化などツーバイフォーの持っていた強みにより、瞬く間に駆逐されてしまったと聞きます。
あらためてツーバイフォーについて調べてみると、最初に、使用する木材の大きさを2インチ×4インチ(5.08㎝×10.16㎝)と表現したものと、38㎜×89㎜と表記したもの、二通りあることに戸惑いました。識者に確認すると、2インチ×4インチは製材時の大きさの目安であり、乾燥させ、その後にモルダー(仕上げ機)をかけたりした結果、建築に使用する際の太さが38㎜以上×89㎜以上であることが必要なのだとわかりました。ツーバイシックス(2×6)、ツーバイエイト(2×8)なども考え方は同じです。
一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会のホームページによると、ツーバイフォーは枠組壁工法で、住宅の壁や床、屋根は、
1.2×4材や2×10材等の木材を組んで「枠組」をつくり、
2.「枠組」に構造用面材を接合し、剛性の高い版(「ダイヤフラム」)を構成、
3.それらを一体化して頑強な「六面体構造」を形成します。
とあります。
地震や強風などの力を一点に集中させず、全体で受け止めるため、ツーバイフォーは耐震性・耐久性に優れ、気密性の高さから耐火性・遮音性・省エネ性能も高いとされています。一方、デメリットは箱型が基準で間取りの自由度が低い上、壁が構造を支えているため簡単には抜くことができないといった制約を指摘する声もあります。日本で今でも在来木造が残っているのは、狭い敷地をできるだけ生かして住宅を建てられる、大工さんという存在がいたからでしょう。
他に、ツーバイフォーのメリットとして上げられているのは、在来木造より工期が短いこと、また職人による施工のバラつきが出にくいことがあります。協会によって施工基準が厳格に定められているため、メンテナンスがしやすいという利点もあるようです。
しかし、大型パネルを前提とした在来木造と比べると、その利点は輝きを失うように見えます。大型パネルは上棟・一次防水まで一日で済みますが、ツーバイフォーは土台の上に一階の床と壁、その上に二階の床、というように重ねていくので、屋根がかかるまでの期間、雨に濡れるリスクがあります。在来木造は施工者によるバラつきが多いと言われていますが、大型パネルならその心配はありません。
ただ、資源の側から見た場合、ツーバイフォーには決定的なメリットがあります。それは部材が規格化されているため、断面の種類が極めて少ないということです。在来木造は木を無駄なく使おうとするあまり、数十から時には数百もの断面の部材が必要で、安定供給を担保しようとすると、生産者が多くの在庫を抱える負担に苦しんできたのです。
その点、ツーバイフォーはSPF(スプルース・パイン・ファーの総称)といった、樹種さえ区別しない材料を決まった形に製材することで安定供給を確保し、その代わりに建築側はそれをうまく使いこなす、という両者の歩み寄りの結果生まれた工法と言えるでしょう。
日本の製材業者もツーバイフォー工場への供給を始めてはいますが、現在はまだほとんどの材を輸入に頼っているのが現状です。しかし、中国のような新たな買い手との競合や円安によって、将来的な安定供給には黄色信号が灯っているようです。間柱に近い薄い部材は乾燥も容易で、断面の種類が少ないので製材の効率化も図れます。在来木造で使い方が難しいとされていた大径材も、ツーバイフォー用としてなら生かせる可能性が出てくるでしょう。
大型パネルの持つ利点と、ツーバイフォーに内在する建築が山側に歩み寄る姿勢、その両者の結合は、国産材利用の新たな地平を切り開くかもしれません。

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