文月ブログ

林業ビジターエッセイ-山長グループその5「デジタル調査が開く未来」

山林から住宅まで、一貫生産を行っている山長グループですが、それでも昨年のウッドショックでは影響を受けない訳にはいかなったそうです。その主な理由は、足りない木材をすぐには山から調達できず、市場で購入していたからでしょう。
昔は山に生えている木を購入する前に、一本一本の樹種や太さ・曲がりの程度などを詳しく調べる毎木調査を行っていました。木材の値段が高く、それをするだけの人件費を十分賄えた上、人手の確保も可能だったからです。しかし今は、原木の価格が当時の二割以下に下がってしまい、きつい作業に従事する人もいないため、ベテラン社員の目と少ないサンプル調査に頼って立木を購入しています。当然のことながらその精度は低くなり、伐採して玉切りし、貯木場で仕分けまでしてみないと、どのような材が取れたかはわかりません。極端なことを言えば、杉と檜の割合さえ事前には明らかでないのです。
そのため、発注のあった住宅の部材を足し合わせてみた時、檜が足りないのに杉ばかり産出されるとか、梁桁に使える質の良いA材が不足しているとか、そういったミスマッチが起こってしまいます。従来は約3か月分という多量の在庫を持つことで対応してきましたが、ウッドショックの際にはそれを超える注文が相次ぎ、外部から高値の材を買い付けるしかありませんでした。そもそも、大量の在庫は保管場所や金利負担などで経営を圧迫します。持たなくて済むものなら、持たない方がずっと良いのです。
そんな状況を変えるかもしれない手段が、今回の視察で同行した人々の、ドローンによる森林の精密計測とその解析技術です。1ヘクタール15分程度の飛行で必要なデータを集め、解析によって樹種や樹高・胸高直径・材積などに加え、詳しい地形も割り出します。そのようなデータを活用できれば、需要に合わせた生産計画を立てるのは遥かに容易になるでしょう。
今はまだ、木の幹の材積がわかっても、そのうち製材品に利用できるのはどのくらいか、という利用材積を推定することは難しい上、コストも実用的なレベルには程遠いのが現実です。しかし、現場に赴いて伐採木の実寸データを測り、解析データと突き合わせるといった地道な作業を通じて、精度の向上を図ることは可能です。更に、地形データを利用した架線の有効な設置場所の提案、需要にマッチした造材方法の推奨などの機能を付加すれば、必ず費用対効果が閾値を超える日がやってくるでしょう。
森林は、日本で自給できる、しかも適切に扱えば再生産が可能な貴重な資源です。そして、自分のためでなく、将来世代のために植えて育てた人々のおかげで使うことができる遺産なのです。その思いのリレーを私達の世代がやめてしまうことは、未来世代への責任を放棄すること、それは未来を失うことだと、私は考えています。山長グループの人々の誇りは、紀州の海に輝く太陽のように、これから先の未来を照らし続けることでしょう。

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