文月ブログ

林業ビジターエッセイ-山長グループその4「スマート製材YSS」

真っ直ぐで目の詰まったA材と呼ばれる良質な丸太に対し、少し曲がっていたり、材質に問題があったりするB材は、手間をかけて製材しても元が取れず、多くは合板工場などに安く買い取られていきます。
極力コストを抑えてB材を間柱(柱と柱の間に下地受けなどのために建てる柱)などの製品に加工するために、山長商店では2021年に、「Yamcho Smart Sowmill」(YSS)という新工場を稼働させました。
1000坪もの大空間に設置された大型の製材機が、フォークリフトで投入される丸太を次々に処理していきます。レーザーで太さや曲がりを計測し、最も歩留まりが良く、木の繊維に沿うように、鋸が自動で動いて、最終的に細長く小割にされた板材を大量に生産します。次の乾燥工程のため、風が通るよう、間隔を空けて桟木を置いた上に木材を並べ、何段にも重ねたものを桟積みと言いますが、それも全て自動で行われます。乾燥の後には、モルダー加工(表面を平らにする工程)、選別を経て、間柱になるものは自社で使う他、集成材用のラミナ(挽き板)は集成材メーカーに加工を依頼します。
年間12,000~15,000立法メートルもの原木の製材を目指すという大型機械、しかし要員は製材工程が二人、乾燥・モルダー工程はわずか一人という少なさです。巨額の投資をしてこの工場を立ち上げた背景には、この地域の森林の価値を少しでも上げたい、せっかく育った木を大事に使いたいという、山長の人々の思いがあったのでしょう。
スギノアカネトラカミキリという虫の食害が広がっていることも大きな理由のようです。この虫の食痕のある木材はアカネ材と呼ばれて価値が落ちてしまうため、被害が予想される地域では立木を高く買うことができず、山主は再造林の意欲を失ってしまいます。そのような木でも、小割にすれば使える部分が増え、集成材に加工するなどして利益を積み増すことができるのです。
ここでも、少ない要員ながらやはり選別と検品が行われ、山長材のブランドを守る姿勢が損なわれることはありません。その思いが天に通じたのか、昨年のウッドショックでは、この工場が稼働していたおかげで、品不足の影響をかなり軽減できたそうです。
これほどの経営努力を続ける山長グループですが、一貫生産にもかかわらず、ウッドショックによる影響を完全に避けることは難しかったと聞いています。
次回はその理由と、解決策の可能性についてお話しましょう。

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