平成2年(1990年)、スギ中丸太の平均価格は現在の倍近い3万円前後だった。バブル崩壊に始まった日本のデフレ時代、丸太価格は長期にわたって下落し、戦後に植えられた人工林がせっかく収穫の時期を迎えたというのに、建築に使われる木材の多くは外材を中心とした商流で固められ、森林組合の多くは補助金をもらって森林整備をするのが精一杯という状態に陥ってしまった。
そんな中、この30年で従業員数を5倍、事業収入を6倍にした森林組合がある。大分県の佐伯広域森林組合だ。素材生産事業者の伐採地まで含めた再造林、利益相反を乗り越えて5万m3を生産する製材所、更に自ら木造建屋を建築する能力まで身に付けた彼らは、未来の森林組合の姿を示していると思う。
最近、農業の世界では、離農者が多くなって区画整理がし易くなり、機械化とICTの活用によって若い人達の就農が増える地域も出てきているようだ。林業・木材産業は、江戸時代から続く分業と林地の零細所有、人余り時代のデジタル化の遅れなどで、やる気のある人が入って来ても、その能力を活かしきれない時代が長く続いてきた。これからようやく、事業領域を川上から川下にまで広げ、地域の森林を守りながら富を生み出す存在へと変化を始めるだろう。
その未来を一足早く目にする機会を皆様にお届けしたい。12月4日(木)~5日(金)の二日間、佐伯広域森林組合を訪れるツアーを予定している。団長は元林野庁長官で今は全木連副会長の本郷浩二氏が引きうけて下さった。一日目は組合の取り組みに関する座学と製材工場・自力建設した2×4用工場などを見学、二日目は育苗ハウスと採穂園、伐採現場を訪れる。少しだけ余席があるので、興味がおありの方はメッセージを頂きたい。人工林が更新され、あちこちで樹齢の異なる若木達がスクスク育つ風景が、あなたを迎えてくれるはずだ。
文月ブログ
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