文月ブログ

森と生きるためにー木島平での現地検討会

2023年5月29日、長野県の木島平村にあるジャンプ競技場のすぐ近くのカラマツ林で、「ドローンToハウジング」の現地検討会が行われました。この事業は、正式には「令和 4 年度「新しい林業」に向けた林業経営育成対策のうち経営モデル実証事業」として、「川上と川下のデータ連携を柱とするコスト削減と山元還元の実証」を目的に実施されているものです。わかりやすく言えば、建物の設計図書から必要な部材を抽出し、それを逆算して適寸の丸太を想定、ドローンなどレーザー機器で計測した立木のデータと照合し、適合する木を選択して造材します。通常の伐採は、建築や合板向けに3mか4mの長さで切り揃えますが、今回は製材した時の歩留まりが最も良くなるよう、3.3m、5.6mといった長さで造材します。それをカラマツ製材の専門技術を持つ会社に運んで製材・乾燥してもらい、プレカット工場での加工、大型パネル工場での組み立てを経て、10月には松本市内で上棟する計画です。

カラマツは非常に硬く、釘が打ちにくいといった材質から、住宅用の建材として使える部分が限られます。今回使用する部材は梁桁を中心に、2棟で丸太43本分と見込まれていました。レーザーの計測結果では、何とか必要な部材を賄える想定でしたが、実際に現地で確認すると、樹皮に傷があって使えないものが多いことがわかりました。以前行われた列状間伐の伐出時に、枝が残存木に当たって傷をつけていたようです。間伐は残された木の成長を促し、価値を高めるために行うのに、その木を傷つけたら、意味の無いマイナスの行為になってしまいます。立ち会った森林組合の役職者は、この惨状を作業した人に見せたいと悔しそうでした。

5月の連休明けには対象地の伐採が始まり、選定した木を伐採・造材した後に正確な径などを計りましたが、残念なことに使えない丸太が多く出ました。樹皮の厚みが想定よりも大きく、直径が足りないもの、木の曲がりが許容範囲を超えたもの、木口に腐れや割れが出ているものなどです。製材所の担当者に確認を依頼したところ、使用可能なものは7本のみとなりました。その丸太は製材・乾燥を経て建築に使用され、不足する木材は製材所の在庫から購入することになっています。

この結果は、レーザーの点群データから建築に適した木材を選定するには、今の技術レベルでは到底足りないということを示しています。林分自体がほとんど手入れをされず成育が良くなかったため、十分な直径の木が少なかったことは不利な要素でした。木の曲がりを表す数値はある程度正確に計測できていたので、もっと太い木が多ければ、曲がりの少ない木を選定できた可能性もあります。樹皮の傷などは、レーザーではなく写真画像から特定する方が効果的かもしれません。そのような技術は、今後更に進化していくでしょう。

検討会当日は、この厳しい結果を悲しむような雨になりました。足場も悪い中、それでも傘を差し、長靴を履いた20人以上の人が伐採現場を訪れました。事業発注元の関係者、有識者、関係金融機関やメディアの方などです。上記の結果は残念ですが、ここで得られた知見は決して無駄ではありません。世界で初めて、設計図書から遡って伐採・造材を行うマーケットインへの挑戦は、まだスタートを切ったばかりです。雨除けのテントの下で実証事業の経過報告を聞いていた多くの人も、今回の結果から得られたものをいかに大きく育てるか、そこに期待を寄せてくれたようです。ドローンのデモ飛行は中止されましたが、ICTハーベスタによる伐倒・造材のデモンストレーションには、参加者の多くが身を乗り出していました。

この場所は、地拵えをした後、ホロレンズを使った植栽・下刈りの省力化を目指す実験場となります。カラマツが使われた家に住む人が、いつかここを訪れ、植えられた苗木がスクスク育つ様子を目にするかもしれません。そして、ここが森林と住宅をデジタルデータで結ぶ「森林直販」が誕生した場所だと言われる日が来ることを、心から願っています。

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