文月ブログ

再造林費用を生み出す

先週、再造林費用を製材品1m3当りで割り返すとどのような結果が出るのか、という試算に関する勉強会があった。
再造林とは、一定面積の人工林を全て伐採した後、跡地を地ならしし、地域によってはシカに食べられないよう周囲に高い柵を張り巡らせ、苗木を植えて、5年ほどの間は雑草に負けないよう夏に草刈りを行うなど、森に戻すべく面倒をみる仕事を差す。地域や方法によって違いはあるが、一般的に300万円前後の費用がかかると言われる。森林は水源やCO2吸収などの公益的機能があるので、個人の財産であってもその再資源化に補助金が出ていて、7割~9割がカバーされる。しかし立木の価格が低く所有者に還るお金が少ないために、再造林が中々進まない。
地域や山の手入れの度合いにもよるが、1haの立木が200万円以上で売れる場所はかなり限られていて、多くの地域では100万~150万円、中には50万円程度にしかならない場所もある。再造林補助金が9割出るとしても、山主が30万円を惜しむ気持ちは理解できる。
そんな再造林費用を、製材品の単価で割ってみたらいくらになるのか、それをある森林組合で正式に調査した結果を基に、他地域に当てはめたり、バイオマスの売上も考慮したり、検討を行ったのが今回の勉強会だ。
その結果わかったことは二つある。その一つは、重く感じる再造林費用負担も、製材品の単価から見れば大した金額ではなくなるということだ。今回調査した森林組合の場合、長年の努力で96%近くまで補助率を高めていた。1haあたりの収穫量は500m3あり、製材品になる比率も5割と高い。そのような条件下であれば、製材品1m3当りに換算した再造林費用は1,500円以下で、5万円~7万円になる売上から見ればわずかな金額にすぎない。
それほど条件の良くない他地域の例で試算しても、製材品1m3当りの再造林費用は8,000円程度に収まるようだ。その場合、再造林のコストを圧縮する、タンコロなどを効率的に集めてバイオマス発電所に売る、といった手法を駆使すればその金額を低減できるだろう。
ある県の職員は、合板工場に再造林費用の負担を求めているそうだ。合板向けであれば材の品質にさほど拘らないので、植栽本数を少なくし、成長の早い苗木で下刈り回数を減らすといった工夫でコストを削減できる。しっかりした数字で根拠を示せば、費用の一部を負担してもらうことが現実味を帯びてくる。
もう一つ確認できたことは、森林直販の有効性だ。製材品の単価に換算した金額が例え10,000円であっても、住宅一軒に使う木材が15m3ならわずか15万円、全体の価格の1%にも満たない。これを施主に説明して負担してもらうことも考えられるが、山側が建築の足元にまで事業領域を広げ、建築部品を自ら生産するなら、簡単に賄える金額だ。
再造林率3割という状況を改善しなければ、20年~30年後には資源は枯渇してしまう。日本の森を、富を生み出す宝として次世代に遺す、そのための手掛かりとなる貴重な情報を基に、様々な分野の専門家の意見を聞くことができた。今後更に議論を深め、実践に繋げていくための出発点になったと思う。

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