文月ブログ

成熟した杉の持つ可能性

時が解決するものは結構多い。学生時代の失恋の痛み、やらかしてしまった大失敗、子供のアレルギーも大人になるとかなり改善するらしい。
1990年代、国産材自給率の低下を食い止めようと、2×4材の国産化に取り組む試みがあった。しかし当時の杉はまだ若くて細い間伐材、北米のSPF(スプルース・パイン・ファーの総称)は天然林から切り出された熟成木で、強度や釘の支持力など、全く太刀打ちできなかった。
それから30年が経ち、杉は太くなり十分成熟した。SPFは若い人工林のものが増え、近年は曲がりや捻じれなどが目立つようになっている。そこに円安や、世界の木材貿易における日本の力の低下が加わり、杉の優位性は高まっている。
2×4建築には木材の寸法精度の低さを許容する、クリアランス(隙間・ゆとり)と調整という考え方があるが、杉で試すと、そのクリアランスをゼロに近づける可能性が見えてきたという。それは気密性・断熱性の向上につながる。2×4材の国産材比率はまだ2割程度だが、それは大きな伸びしろがあるということだ。
国全体が工業化に突き進む中で、忘れ去られていた森林は着実に成長・成熟し、主役の交代に備えているように見える。次の工業化は森林を主語とした産業で興り、重要な輸出品を生み出していくだろう。私達が森林という時間の貯蔵庫をうまく活用できたらの話だが。

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