文月ブログ

若き林業技術者に見た希望

若い林業技術者に話を聞いた。地元出身で、伝統的な林業地域の大学校に二年通った後、自分の親も働いていた今の会社に就職したそうだ。林業は地域ごとに全く違うので、学んだ内容が必ずしも地元で活かせる訳ではない、だから早めに戻ろうと思ったという。
彼が勤めて5年ほどになる会社は、社長が保有する1,000haほどの森林で素材生産をしている。彼はもともと統計やデータ解析に興味があり、購入するドローンの選定から運用まで、責任者として関わっている。
1,000haの写真やレーザ点群のデータは取得・解析を終わり、様々なソフトを駆使して資源量の推定と検証を行っている。ドローン計測と同時に実地踏査と毎木調査を実施し、ある場所では4haの材積推定が20㎥しか違わないという結果が出たという。九州ではha当たりの生産量が500㎥になることも珍しくないから、仮に2,000㎥とすれば誤差1%というかなりの精度だ。
しかし、高い精度の推定ができたとしても、皆伐して普通に造材・販売するなら、解析にかかるコストの回収はできないのでは?と意地悪な質問をぶつけてみた。
「そうですね。でもこの技術の精度が上がれば、他の山主さん、特に地元にいない山主さんとも根拠を示して交渉ができるようになります。それに、記録を残すって大事だと思うんです。伐る前はこうだったから、20年後・50年後にはこうなるはずだ、という予測ができるようになる。そう考えてやっています。」
今の利益でなく、遠い将来に役立つデータを積み上げる、それを指示したのは社長なのかもしれないが、彼自身が澄んだ目を持ち、淀みなくそれを口にしたことが印象的だった。
そう、森林は若い彼らのもの、そしてこれから生まれてくる子供たちのものだ。だから森を詳しく調べ、記録を残そうとする彼は、きっと次の世代に正確にバトンを渡してくれるだろう。

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