山で働く人の賃金はいくらぐらいなのだろう。令和4年度の林業白書には、月給制の従業員は増えつつあるがまだ29%程度とある。林業従事者の年間平均給与は約343万円で、全産業平均よりも100万円程度低い。勤務地が都市部でなく生活費の安い地方だとしても、常に他産業との労働力の奪い合いで不利な状況にある。
東北のある森林組合では、日給が8,500円、自前のチェーンソーを使う場合は+1,500円、同じく下刈り機の場合は+1,200円、自家用車で現場に行く場合は+1,200円とのことだった。自分の車・チェーンソーを使って作業すると日当が11,200円、下刈りだと10,900円ということになる。これでは年間210日働いても230万円前後にしかならない。
山陰の森林組合の場合は、基本給が8,000に評価手当が0円~5,000円、伐倒・下刈り作業手当が2,000円、チェーンソーの損料が2,000円、下刈り機が1,200円、車が600円とのことで、これだと自分の車・装備での日当が伐倒で12,600円~17,600円、下刈りで11,800円~16,800円になる。初心者でも210日働いて250万円、技術を磨けば350万円を超える。一方、九州では高性能林業機械を操る従事者は年収1,000万円以上が珍しくない。やはり地域差や規模による違いが大きいようだ。
一口に林業と言っても、北と南、規模や業態でこれほど異なる。そういう事実を知らずにわかったような事を言っていた過去の自分を恥ずかしいと思う。
自然の中で、危険と向き合いながらも自分の裁量で仕事ができる、それが山を守ることにつながるという彼らの誇りは眩しい。しかし、彼ら彼女らが家族を持ち、家を建て、子供にも継がせたいと思える環境がなければ、森は守れない。樹木の時間に合わせて、そこに暮らしが存在し続ける、そのために必要な地域ごとの解を探す人々に、私は寄り添っていきたい。
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