文月ブログ

森と生きるために-書籍から拡がる世界

森林列島再生論の出版から2か月が経ちました。最初はただ書店に並ぶのを見るだけで嬉しく、知人の感想や通販サイトのレビューに一喜一憂していましたが、ここに来て大きな変化が起きています。一つは本を読んだ方からのビジネスの引き合い、もう一つは自分が信州大学に招かれ、来年から農学部伊那キャンパスで勤務することになったことです。
本の感想や何か関りを持ちたいという問い合わせは出版当初からありましたが、最近は素材生産などを行う山側の関係者から、大型パネル工場を建てたいという話が来るようになりました。森林を中心とし地域で循環するスモールサプライチェーン、それを全国に1000か所作りたいという私の目標に向けて、具体的な動きが出て来たのは本当に嬉しいことです。急激な円安と様々な物資の供給不安は、人々の意識を自前の資源を生かす方向に向けさせます。そこに「こうすればいい」という解決策が提示されたのですから、難しくともやってみようと思う人達が出てきたのでしょう。円安は海外から来ていた労働力の供給にも急ブレーキをかけています。日本にはもう、非効率な輸送・保管やアナログでの販売管理など、価値を生まない仕事に割く労働力は無いのです。通常の社会なら、流通の中抜きや作業の効率化は失業者を生むという問題につながりますが、これからの日本はそれがなく、むしろ徹底的に人手を省くことが生き残りの鍵でしょう。安いものを大量に仕入れ、遠くから運び、安く販売するビジネスは、安い賃金で働く多くの人々の犠牲の上に成り立ってきました。そうではなく、できるだけ地元で仕入れ、最低限のエネルギーで加工し、適正な賃金を支払うことで人々の購買力を高め、結婚出産を後押しして人口減少をゆるやかにする、それを地域材の住宅で実現することが、森林列島再生論で目指したものです。
以前勤めていた旅行会社からも、林業や木材について学ぶ教育旅行のモデルコース作りを手伝って欲しいと依頼されています。林業現場は狭い山道を移動するため、どうしても参加人数が絞られますが、数百人単位の旅行では得られない価値を、しっかり訴求したいと考えています。
そして来年一月から、週3日程度のペースで、長野県上伊那郡南箕輪村にある信州大学農学部の加藤先生の研究室で勤務することになりました。仕事は川上・川下(森林・建築)のデータ連携の具体化です。どちらの専門家でも無い私ですが、だからこそ間をつなぐために必要な課題の解決を担えるのは無上の喜びです。
森林列島再生論の著者の一人になり得たのか、真価が問われるのは正にこれからです。強い決意と覚悟を持って前に進み、進捗を報告していきます。

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