文月ブログ

林業ビジネスチャレンジ-渡良瀬林産とエヌケーケー③

渡良瀬林産とエヌケーケーを含む企業グループは、渡良瀬流域川流域の森林を生かし、未来につなげていくことを、企業理念や事業目的に掲げています。
グループの渡良瀬森林開発は、周辺の道路にいくつもの大きな看板を出し、担当者の顔写真を掲示して「山を買います!」と呼び掛けています。栃木県内で、杉・檜の植栽された山(原則1ha以上)を購入し、造林事業を含む持続的な森林経営を行おうとしているのです。よく、外資が水源地を買い占めているとか、最近はレジャー目的で山を買う人が増えているなどと聞きますが、いずれも非常に小さなもので、単なるブームに過ぎません。山の所有には本来責任が伴うものですが、今は多くの山主が、手を付けられずに放置しているのが現状でしょう。これを購入し、伐採後には必要に応じて再造林も行っていく、それに地元の企業が正面から取り組んでいるケースは、全国的に見ても稀ではないかと思います。
更に、エヌケーケーは、「渡良瀬キバコの家」という規格型の住宅を作り、施主に直接販売することも計画中です。地元の木材を使い、しかも高性能でデザイン性に優れた住宅を低価格で販売するためには、幾つかのプランに絞った規格型住宅の開発が欠かせません。渡良瀬林産の管理棟には、工場見学者に向けて、渡良瀬川流域材を使うことの意義を理解してもらうための動画を投影できる、プレゼンテーションルームも備えられています。正に私が目指す「森林直販」を実現しようとしていることに、驚くと共に大きな期待を持ちました。この住宅は、グループのコンチネンタルホームと競合してしまう可能性もあります。それでも廣澤代表が開発の許可を出したのは、地域の山を守るという目的を最優先に考えた結果なのでしょう。
この一連の企業活動に大型パネル工場が導入されれば、大工不足への対応、工期短縮や加工精度の向上が見込め、木材の歩留まりも上がり、大きな利益が出ると思われます。そうすれば、地域の材を活用し、山を守り、域内の経済を潤す小さな森林産業が完成するでしょう。今回見学した2社で働く人達が、一様に明るく、柔らかい表情をされていたのも心に残りました。飯塚専務は、必要なら人は増やせる、と仰います。それはつまり、地場の賃金より良い待遇や職場環境を提供できており、人材を集められるという自信の表れと受け止めました。一方で、エヌケーケーでは、負担の少ない仕事もあり、70歳まで勤められるとも聞きました。山を大切にすることと、人を大切にすることは両立できるはずだと、私はずっと考えてきました。その実践例を自分の目で見て、あらためて思いを強くしています。
私や塩地氏と、飯塚氏やエヌケーケーの須藤社長は、これまで全くお互いの存在を知りませんでした。しかし、その構想がぴったりと一致していたという事実は、これが時代に要請されたものだという確信を抱かせます。飯塚氏には、このスモールかつハイリターンなサプライチェーンの伝道者として、これから全国を飛び回って頂きたいものです。もちろん私自身も、この動きをより多くの人々に伝え、実現につなげていこうと思います。

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