文月ブログ

林業ビジターエッセイ-山長グループその1「上棟現場で一目惚れ」

「祖父が植え、父が育てて、私が届ける」紀州で林業・製材業などを営む山長商店のパンフレットの表紙に記載された言葉です。山長は江戸時代末期から育林事業を始め、6000ヘクタールに及ぶ自社林を保有して、杉・檜の伐採から製材・プレカット・住宅販売まで、一気通貫で事業を手掛ける老舗企業です。

長く森林を巡る旅を続けてきた私は、山長という名前を幾度も耳にしていましたが、初めて実際の商品に触れたのは、木造大型パネル技術で建てられた住宅の上棟現場でした。一階とその天井にあたる二階の床、そして二階の壁まで施工が済んだ段階で、建て方さんの昼食休憩の時間に中を見学させてもらった時です。太い梁や桁を目にして、その目の詰まり方、木肌の艶やかさに惚れ惚れしたのを思い出します。壁に隠れてしまう柱には、産地名やJASマーク・含水率やヤング係数(曲げ耐性等級)・シリアルナンバーなどが印字され、しかも「木の国育ちの大自然」という墨書きと工務店名が、全部同じ方向を向くように印字されていました。後で聞いた話では、担当者が一本一本の木を見ながら、家のどの部分に建てるのかを確認した上で、印字面を決めて摺っているそうです。その品質への拘りと見た目の美しさに、私はすっかり心を奪われてしまいました。

そもそも大型パネルは高い寸法精度が要求されるため、使用するのは集成材が基本と聞いています。国産の無垢材は反ったり曲がったりする上に乾燥も難しく、金物工法のためにピンを打つと、材が真っ二つに割れてしまう(!)ことさえあるからだそうです。にもかかわらず、山長さんの材ではそのような不具合は起きないとのことでした。

いったいどんな山から、どのように伐り出し、どんな風に加工されてこれほど素晴らしい材になるのだろう? そんな私の想像を確かめる、絶好の機会がやってきたのは、2022年5月上旬のことでした。明日からはその旅の様子と、そこで感じたことをお話します。

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