文月ブログ

山腹で育つ若木の持つ力

 今回で三回目となる佐伯ツアーが無事に終わった。遠くは北海道や福島から来られた皆様が、佐伯の山々と、その風景を作り上げた佐伯広域森林組合の製材工場や育苗施設などを見学し、来て良かったと言って下さるのは無上の喜びだ。
 今回は特に、大分空港から宇目本所までの移動中、豊後大野市から佐伯市に通じるトンネルを抜けた後の風景の変化に注目して頂くよう、事前の案内でも触れ、送迎バスの中ではその瞬間をお知らせした。来る前は、言うほどの違いだろうかと疑問を持たれた方も、実際に目にした光景に、期待以上だと驚きを口にされていた。
 佐伯市の風景を独特なものにしているのは、山腹のそこかしこに見られる林齢の異なる若木の林だ。佐伯市の森林面積は大分県の17.4%に過ぎないが、スギ・ヒノキ人工林の齢級別面積(齢級:植えてから5年ごとに1齢級とする数え方。2齢級は6年~10年)で1~2齢級を見ると、佐伯市は2,744haで大分県全体6,050haの45%を占めている。つまりここ10年間、大分県で新たに植林された場所の半分近くが佐伯市内だったということだ。
 遠目でははげ山に見える場所も、目を凝らせば米粒のような苗木がしっかり育っている。最初は40㎝弱の苗木が、夏場は繁茂して光を遮る雑草を造林の人達に刈ってもらいながら懸命に成長し、薄緑から次第にその色を増して、尖った梢を競うように風になびかせる。そんな光景が、外から来てその意味を知る人の心をどれほど打つことか、普段佐伯に暮らしている人々には想像もつかないらしい。
 一方で、これほど豊かな森林資源を活かそうとすれば、大量に伐採し、大型製材機で加工しなくては追いつかない。年間に118,000m3を消費し、47,000m3の製材品を生みだす米国製の製材機は、スキャナーで木材を透視し、繊維に沿って自動で材を挽いていく。機械音の響く中を高速で流れていく木材は、瞬く間に生き物から素材へと姿を変える。
 今回、初めて林業現場を見た建築系スタートアップの若い経営者は、時間と空間の広がり、数十年をかけて育つ超低速の森と、製材機の動く超高速の空間が重なり合っていることに感銘を受けたと言っていた。
 苗木がどれほど慈しんで育てられ、急な斜面に植えられて風や日照りに耐え、長い時間をかけて高く伸び、太り、危険を伴う作業によって伐り倒され、製材・乾燥を経て建築部材になっていくのか、それを自分の目で見れば、誰だって木を大事に使おうと思うだろう。少なくとも、木が育つまでにかかった50年の月日を建物としても過ごせるように、建築業界の方には力を尽くして欲しいと思う。
 佐伯の風景に胸打たれた人々が全国に散らばり、その土地ごとに森の様子は違っても、育つ若木の姿が人々と森の幸せな関係を実感させてくれる、そんな未来を信じさせる命の力が、佐伯の山には息づいている。

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