一定面積の木を全て伐採した後、跡地に苗木を植えて、ちゃんと森に戻るように周囲の草刈りをするなど、5年くらい面倒を看る仕事を再造林と言う。令和6年度の林業白書を見ると、その費用は1㏊当たり凡そ300万円、そのうちの7~9割(地域や条件によって異なる)は補助金が出るが、残りは所有者が負担する。しかし原木1m3の買い取り価格は約4,200円、1㏊当たりの収穫量は全国平均で320m3程度なので、売値は1,344,000円(実際は手数料を差し引かれもっと少ない)に留まり、30万円~90万円かかる再造林費用を負担したくない山主が多く、再造林率が3~4割の状態が続いている、ということらしい。
この再造林費用を製材品1m3当たりで算出したらどうなるか、という調査が、公認会計士によって大分県の佐伯広域森林組合で初めて実施された。数字だけが独り歩きするのは誰にとっても良くないので、ここでは伏せておくが、一つだけ確かな事は、佐伯のように収穫量が1㏊当たり500m3なかったとしても、原木の内、製材品にできる材木の割合が50%を下回っていたとしても、製材品の価格で割り返せば1m3当たり3,000円~8,000円であり、工務店が施主に売る価格から見ればわずか数%にすぎないということだ。
一般的な住宅一棟に使用される木材の量は15m3~20m3と言われているので、最大でも16万円、条件の良い地域なら3万円以下ということもあり得る。その金額で、再造林が必ず行われ、森林が維持されると聞いて、数千万円を支払う施主が負担を嫌がるだろうか。喜んで応じてくれる人は決して少なくないと私は思う。
再造林が進まない理由は費用の問題だけでなく、造林の担い手不足、所有者に後継者がいないなど複雑に絡み合った事情がある。しかし費用の問題が明らかになり、下流での負担が進むことは、糸口を見つけて解きほぐすきっかけにはなるだろう。
多くの事業者が関わる従来の商流では、せっかく施主が負担した費用が誰かの利益に化けてしまうリスクがある。それを避け、山間地域に雇用を生み出して住宅購入費という大きな資金を地元で循環させ、地域の経済を支える、それを可能にするのが森林直販だ。今回明らかになった、製材品1m3あたりの再造林費用の数字は、その効果の大きさを証明したと思う。
鍵を握る数字を正しく知る、それができるまでにどれほどの時が空しく費やされたことだろう。私達はようやく、解決に至るステップを登り始めたような気がする。
文月ブログ
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