和歌山県の田辺市に本社を置く山長商店、その歴史は古く、ホームページによれば江戸時代末期から育林事業を始めたとあります。所有する6000haの山林やその周辺地域から丸太を伐り出し、製材・乾燥させ、プレカット工場で加工し、住宅建設の現場に納品する、一貫生産を手掛ける老舗の企業グループです。
山長材と言えば、木造住宅を手掛ける関係者なら知らない人はいないブランド材ですが、そのレベルを保つための努力は相当なものです。自前で調達する木材は、長い間放置されてきた山から出る節の多い材もあれば、アカネトラカミキリという虫の食害で価値が落ちるものもあります。山長のブランドに相応しい材が足りなければ、近隣の市場で購入してでも、質の担保を優先するのです。更に、見た目の美しさへの拘りは、JAS材にも適用されます。普通、機械等級区分のJAS材は、強度と乾燥が基準をクリアしていれば認められますが、山長の場合は、まず目視等級区分の資格を持つ技術者が材を選別した後、機械を通します。数字上の基準に見た目の良さも併せ持つ、それが山長のJAS材なのです。最近の住宅では柱が表に出ない大壁が一般的で、どんなに美しい材でも施主がそれを目にする機会はほとんどありません。山長の営業担当者はお客様に、「骨と一緒で、目に見えないからこそしっかりした材を」という説明をされるそうですが、本当は見て頂きたいところでしょう。山長材を使った住宅の上棟に、お施主さんがご家族を連れて見学にいらしたことがあります。私は休憩時間に中を見せて頂き、ご家族の皆様に、「こんな素晴らしい木でできた家に住めるのは羨ましい」とお伝えしました。皆様、とても誇らしげな笑顔をされていたのを覚えています。
それほどまでに無垢材に拘り、ブランド化を成し遂げてきた山長グループの建材商社、モック株式会社が、大型パネル工場を建設し、建築部材の生産に乗り出すことを決めました。それは全国の木造建築関係者に少なからぬ影響を与えるトピックです。集成材を原則とする大型パネルに、山長が真剣に取り組む理由は何なのか、それを一言で表せば「国産材復権への挑戦」ではないでしょうか。今、この技術を生かせなければ、国産材はラミナなどの原料になり下がり、山の維持管理は益々難しくなっていく、そんな危機感が根底にあるように思います。
明日は更にその詳細をお話しましょう。
文月ブログ
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