文月ブログ

石油と木質バイオマス

ホルムズ海峡が事実上封鎖されたために、世界中で石油製品の供給不安と価格高騰が起こっている。日本には石油備蓄が250日分あるので当面困る事は無いという当初の予想に反して、早くも医療用備品などに深刻な品不足が発生し、広範な石油化学製品の値上げや出荷制限が始まっている。過去に起きた石油危機の時とは比べ物にならないほど、巷には石油由来の製品が溢れ、まるで血液のように経済や暮らしの隅々にまで浸透していたのだと知る。世界で1日に1億250万バレル(2024年)という途方もない量が消費されるため、ガソリンなど燃料になる部分以外の成分の用途が徹底的に開発され、安く使い勝手の良い製品の原料になってきた。そう考えると、脱石油などと言ってEVの普及を推し進める事がいかに欺瞞に満ちているかに気づく。レジ袋を有料化してもプラスチックゴミが減らないのと同様に、ガソリン車を無くしても石油の消費量が減ることはなく、石油化学製品の値段が上がるだけだと思われる。もちろん石油資源は有限なので、石油に頼らない製品を増やそうという試み自体を否定する訳ではないが、石油由来の原材料に頼った商品やサービスが生活のあらゆる分野で強固に、複雑に絡み合い、提供されていることは覚えておかなくてはいけない。
そんな中で、燃料としての日本の木材について考えてみる。NPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊氏によれば、2023年、日本ではバイオマス発電に、未利用材1,100万m3、製材端材382万m3、建設廃材860万m3が使われたという。木質バイオマスに詳しい方に頂いた資料では、木材1m3あたりの燃焼エネルギーを石油に換算すると0.2㎘強だそうなので、未利用材1,100万m3は約220万㎘=約1,380万バレル。日本で一日に使われる石油の量は約314万バレル(2024年)なので、4.4日分にしかならない。日本の森林の蓄積量を60憶m3としても、全部燃やしたら6年半しか持たない計算だ。木質資源は到底、化石燃料の代わりにはならない。
そもそも、木質バイオマスが主に発電のために燃やされている事自体、私には残念に思える。発電用ボイラーはエネルギー効率が悪く30%程度でしかない。熱利用なら90%以上も可能なのに、長い時間をかけて育った木を発電のために燃やしていいのかとやるせない気持ちになる。山側の人々にとっては、これまでお金にならなかった林地残材が売れ、素材生産を底支えしているのは確かなのだが、日本の木質バイオマス利用はFITのため発電に偏り、歪められてしまった面があると思う。
石油に頼り、石油に振り回される経済は、資源がある限り簡単には変わらない。車も電動工具も、医薬品やお菓子でさえも、石油製品無しには作られず、使えないのが現実だ。それを認識するからこそ、自給が可能で再生できる木質資源を少しでも有効に、価値を生むように使いたい。周囲の森林の成長量の範囲内で、建築図面に適した木を伐り、住宅備品を製造して販売し、製材端材や森林整備で出たCD材を、工場の乾燥機やそこで働く人達が住む家の給湯・暖房に使える、そんな森林直販コミュニティができれば、地域の木造需要を地域材で賄い、健全な森を未来に遺していけるだろう。森の力が人々を温め、豊かにし、地域の暮らしを支える経済、そこにつながる道を粘り強く探っていきたい。

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